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2019/09/26

「松方コレクション展」国立西洋美術館

後回しにし続けているうちに、会期が終わってしまいました。8月に見た松方コレクション展についてメモを残しておかなければ。

構成は以下の通り。
プロローグ
1. ロンドン 1916-1918
2. 第一次世界大戦と松方コレクション
3. 海と船
4. ベネディットとロダン
5. パリ 1921-1922
6. ハンセン・コレクションの獲得
7. 北方への旅
8. 第二次世界大戦と松方コレクション

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時系列にそって、コレクション収集の過程を追った展示になっていました。松方本人は美術愛好家というよりも「日本に本格的な西洋美術の美術館を」という大志で作品を集めた人だったそうで、今回の展示からは、その大志とこれだけのことを成し得た時代というものにも感じとれるものがありました。そして何より、学芸スタッフによる膨大で根気強い調査の結果を享受できる幸せ。なんというか、知的好奇心がぴちぴち体内で跳ね回る感じ?

混んでいたので西洋美術館でよく見られる絵は遠目でご挨拶程度に見ましたが、それでもなかなか足が先に進めませんでした。大充実。あの美術館のこの絵は松方旧蔵品だったのか!という驚きもたくさん。

国立西洋美術館では松方コレクションの全貌の調査を続けていて、私が今回の松方コレクション展開催の予定を知ったのは、神戸に松方展遠征に行こうかどうしようかと迷っていた頃(2016年9月5日付: https://www.nmwa.go.jp/jp/information/pdf/20160905pantechnicon.pdf)。この記事の中で、2019年に松方コレクション展開催の予定、とあったのを楽しみにしていたのでした。ちなみに、この記事の中で触れられている「松方コレクション ⻄洋美術全作品」は”絵画”と”彫刻・素描・版画・工芸その他”との2巻で発売中。それぞれ32,000円+消費税!買うなら9月中!興味はあるけど手は出ません(笑)。

そして2017年11月にルーヴル美術館で発見されたモネ --- 上半分は損傷のため失われた状態で --- は、フランスから返還後に松方氏のご遺族から西洋美術館へ2018年3月に寄贈。この時公開された、傷みに傷んだ睡蓮の絵には大きなショックを受けました。
https://www.nmwa.go.jp/jp/information/pdf/20180301.pdf
こちらも修復の上で2019年の松方コレクション展に展示予定ということで、今年に入ってからだったでしょうか…国立美術館のクラウドファンディングで『クロード・モネ 《睡蓮、柳の反映》デジタル推定復元プロジェクト』募集があったので、我が家も少しだけ支援することにしたのでした。結婚20周年のメモリアルにもなるかな、と思って。


はは、また前置きが長くなりすぎました。デジタル復元された絵は、入り口手前にありました。テレビの特集番組で見た時より、よりモネらしい色使いになっていたのでは。

展示については、美術展の性格上もあるかもですが、いつも以上に来歴が気になって仕方なくて(笑)、どこから来た絵なのかなーっていうところばかりをチェック(単眼鏡大活躍)。西洋美術館のコレクションも常設に出てくるのは限られたものばかりなので、普段見るチャンスのない作品を見られたのもよかったですね。19世紀以降のイギリス美術なんて普段はロセッティとミレイくらいしか並んでいないのに、こんなにあったんだ?と驚きました。

そして、松方といえば海と船の絵。”松方は芸術的価値より(造船業を営んでいたから)船と海の絵に目がない”と前に読んだ本にあったので、今回もどれだけ見られるかなーとワクワクしてたのですが前半は少なめ。おかしいなー?と思っていたら、のちに別枠で章立てされておりました(数は少なかったけど)。

ブラングィンの影響が大きかったであろうそれまでから、ガラッと印象が変わるのが第4章。レオンス・ベネディットが館長をつとめていたロダン美術館と契約を結び、ロダン作品を入手していきます。このロダンの展示が素晴らしかった。いつも静かに佇んでいる西洋美術館の彫刻たちが、ここではキラキラのスター。中央に彫刻があって、それを部屋をぐるりと回遊するように見て回るのも、こういう混んだ展示ではよい動線だな、と。多くのロダンを抱えて、それだけで章立てできるからこそ、でもありますね。

続くパリ編もオールスターの輝き…なのだけど、驚きは次のハンセン・コレクションでした。松方は画廊や画家からだけでなく、コペンハーゲンの実業家ウィルヘルム・ハンセンからも優れた絵画を入手しているのですね。印象派の著名な蒐集家で、1922年の金融危機の際にフランス絵画を80点手放すことになり、松方がそのうち34点を入手した、と。非常に粒ぞろいの重要な絵画ばかりで、ここにあったのは11点だったけど、北九州市美術館のドガが描いた「マネとマネ夫人像」(マネが気に食わず絵の半分を切り落とした)とか大原美術館のモネ「積みわら」、ブリヂストン美術館もといアーティゾン美術館のマネ「自画像」など、有名でその館を代表するような作品ばかり。

余談ですが、このハンセンさんはのちに経済状況が改善し、以前と劣らぬ印象派の大コレクションを形成したとか。デンマークのオードロップゴー美術館、訪れる機会があるとよいのですが。(2020年まで休館中とのこと)

意外だったのがその後。松方はドイツやスイスなどで絵画を購入しています。フランス絵画が興味の中心だったのに…という意外性は、諜報活動の隠れ蓑としての絵画購入だったのでは、と言われているそう。ドイツのUボート設計図入手が任務だったという話は松方関連の話でよく目にしています。大原コレクションの素敵なムンクの版画は、この時に買ったのですね。

そして、私のこの美術展ピカイチもここにありました。ベックリン「眠れるニンフとふたりのファウヌス」。現在はファン・ゴッホ美術館所蔵だそうです。暗い背景から浮かび上がる輝く白肌にヴェールを纏って眠るニンフと、それを間近から惚けたように見つめるファウヌスたち。ヴェールの繊細な輝きに魅了されてしまいました。もちろん、今までに見たことがある絵でお気に入りはたーっくさんあるのですが、初めて見た絵では、これがドンピシャでした。見られてよかった。

そして最後に第二次世界大戦。散逸していった経緯は知っていたけれど、これだけコレクションを見てきた後だけに、やるせない思いがします。資料もいろいろ見られて、例えばテートで見つかったイギリスの保管倉庫にあった松方コレクションのリストや、今回の復元の大きな手がかりとなったガラス乾板なども。この中には同様に(というより更に酷く)破損したモローの絵画も…。

ものすごい見応えでした。長くなっちゃったので、常設と、新館の方でやっていたモダン・ウーマンは別途。


国立西洋美術館 開館60周年記念 松方コレクション展
https://www.nmwa.go.jp/jp/exhibitions/2019matsukata.html
2019年06月11日 - 09月23日 国立西洋美術館



松方コレクション 西洋美術全作品 第1巻 絵画


松方コレクション 西洋美術全作品 第2巻 彫刻・素描・版画・工芸その他

コメント

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No title

こんにちは。

見ごたえありありですね。

松方コレクション。
「ここからここまで全部くれ」的なことを連想せずにはいられません。

Re: No title

ぱくちーさん、こんにちは。
ご覧になられましたか?
数年前の神戸での展示も見応えありましたが、今回もまた…。
これだけのものを個人で買い集めた、しかもこれでも ごく一部だと思うとクラクラしますよね。
もし私が画商だったら、この東洋の太い客は絶対に手放してはならない、と便宜を図りまくります。
そして「全部くれ」と言わせたい(笑)。