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2019/08/04

「日本・オーストリア外交樹立150周年記念 ウィーン・モダン クリムト、シーレ 世紀末への道」国立新美術館

国立新美術館で開催中のウィーン・モダン展に行ってきました。会期終了1ヶ月前を切って、平日午後でも素描や設計図など細かい展示が並ぶところは割とみっちり混んでましたが、展示作品がものすごーく多いので、後半はみなさんスタミナが切れるらしく、後半は割と好きなように見て回れました。

構成は以下の通り。

  1. 啓蒙主義時代のウィーン −近代社会への序章

    1-1 啓蒙主義時代のウィーン
    1-2 フリーメイソンの影響
    1-3 皇帝ヨーゼフ2世の改革

  2. ビーダーマイアー時代のウィーン −ウィーン世紀末芸術のモデル

    2-1 ビーダーマイアー時代のウィーン
    2-2 シューベルトの時代の都市生活
    2-3 ビーダーマイアー時代の絵画
    2-4 フェルディナント・ゲオルク・ヴァルトミュラー −自然を描く
    2-5 ルドルフ・フォン・アルト −ウィーンの都市景観画家

  3. リンク通りとウィーン −新たな芸術パトロンの登場

    3-1 リンク通りとウィーン
    3-2 「画家のプリンス」ハンス・マカルト
    3-3 ウィーン万国博覧会(1873年)
    3-4「ワルツ王」ヨハン・シュトラウス

  4. 1900年 −世紀末のウィーン −近代都市ウィーンの誕生

    4-1 1900年 −世紀末のウィーン
    4-2 オットー・ヴァーグナー −近代建築の先駆者
    4-3-1 グスタフ・クリムトの初期作品 −寓意画
    4-3-2 ウィーン分離派の創設
    4-3-3 素描家グスタフ・クリムト
    4-3-4 ウィーン分離派の画家たち
    4-3-5 ウィーン分離派のグラフィック
    4-4 エミーリエ・フレーゲとグスタフ・クリムト
    4-5-1 ウィーン工房の応用芸術
    4-5-2 ウィーン工房のグラフィック
    4-6-1 エゴン・シーレ −ユーゲントシュティールの先へ
    4-6-2 表現主義 −新世紀のスタイル
    4-6-3 芸術批評と革新

細かい構成でガイドラインしっかり。

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クリムト、シーレが活躍した世紀末をクライマックスとした、ウィーンの近代化への道を様々なジャンルから紹介した展示でした。これらはまさにウィーンミュージアムのコレクションの柱の1つでもあるので、その収蔵品(と個人収蔵品も)を堪能できる展示でもあります。細かい章立てでもわかる通り、順に見て歩くだけで一つの都市がいかに変化し爛熟していったかが、すっと入ってきました。

ビーダーマイアーや分離派などの絵画、彫刻、工芸のみならず、建築、音楽、ファッションなど紹介されるジャンルも幅広く、これはウィーン好きにはとてもツボにハマる展示だと思います。すごーくウィーンに行きたくなる。オットー・ワーグナーの図面(マジョリカハウス!聖レイオポウト教会!美しすぎる…)やウィーン工房の美意識あふれる食器や家具などの展示も充実しているので、工芸や建築などデザイン系クラスタにも楽しいと思います。

ウィーン文化を語る上で欠かせない音楽についても、例えばシューベルトのメガネが展示されていたり、シェーンベルクの描いた絵が何枚かあったり。シェーンベルクが描いたマーラーの葬儀の絵は象徴派っぽいタッチで他の彼の絵とはだいぶ雰囲気が違い、マーラーの死がウィーンに与えた衝撃を思うなど。

ウィーン訪問時に私もウィーン・ミュージアム・カールスプラッツは見に行って、その時はクリムトが見られればとしか考えていなかったのだけど、やはり展示を見ているうちにウィーンの近代化に目を開かされて、都市化と芸術の関係に自然と意識が向いたことを思い出しました。そういう意味では、今回はその追体験というか、当時意識がまわらなかったことを改めて知る機会としても、もちろんクリムトをまた見るという点でもとても楽しみにしていました。そして、その期待を上回る充実ぶりに大満足。

クリムトについては素描が多いと聞いていて実際その通りだったけれど、素描についてはクリムト展の方と関連したものもあるので、両方見ると尚更よい感じ。油画は日本か現地で見ているものばかりだったけれど、「愛」と「パラス・アテネ」は照明の当て方が工夫されていて、暗い部分に描かれたものが浮かびあがるように見えていたのが非常に面白かったです。普通はよーく目をこらさないと見えないものですから。

さらに嬉しかったのは、マカルトがいくつも見られたこと。ウィーンに行った時はマカルトのことはあまり意識してなくて見た記憶があまりない(笑)のが残念で仕方なかったので、今回間近にじっくり見られたことに満足しています。マカルト前、そんなに人がいなかったし。寓意画や肖像画の美しい女性の描かれ方にもうっとりしたけれど、彼女たちが身につけた宝飾品だけが絵の具を盛るように立体的に描かれていて一際目を引くようになっていることがとても印象に残りました。いやー、いいなあマカルト。日本だとまず見る機会がないので幸せでした。

おそらく現地で見たけどこれも記憶になかったカール・モルの絵も見られて嬉しかったですね。カール・モルの正方形の絵は、クリムトのそれと同じようなサイズだろうとなんとなく想像していたから、それよりけっこう大きかったのも意外でした。キャンバスの目が荒くて、それが独特の風合いにもなっていたように思います。マクシミリアン・レンツの象徴派的でない絵も初めて見ましたがやっぱり好きでした。

ビーダーマイアーもけっこう色々見られて、またちょっと見識が広がった気がしました。今年の秋からまたリヒテンシュタインのコレクションがやってくるから、そのあたりも改めて楽しめそうですね。シーレの筆致をしみじみ見られたのも収穫でした(いつも画面の迫力に圧倒されて、近づいて見るのを忘れてしまうw)。

工芸品ではオットー・ワーグナーがウィーン市長のために制作した革張りの椅子が印象に残ります。フォルムもかっこいいのだけど、革張りに螺鈿で言葉が埋め込んであったり、装飾が素晴らしい。単眼鏡で見ると言葉が浮き上がって見えるんだよ。美しいなあ。

会期末が近づいていてそれなりに混み合っていたので、興味あるところだけをじっくり見て、あとは遠目のスルー気味で回りました。普通の企画展なら20分で出口についてしまうようなペースだったけど(笑)それでも1時間近く。全部じっくり見たら倍以上かかりそう(その前にたぶん気力体力が尽きるだろうけど)。400点近い展示物は伊達ではありませんでした。大阪では330点ほどに減るそうですが、それでも十分多いよね。。。

国立新美術館ではあまりこういう展示はされないのだけど、展示室の角の両側に作品が架けられて鑑賞者がたまって絵が見えなくなるケースがいくつか。少しストレスがありましたが、点数が多いゆえでしょうね。

図録に寄せられた文章でその美術展の意識が見えるものだけど、図版・解説も含めて流石の大充実。装丁もゴージャスで、手に取るとずっしりずっしり重たいです(ので、通販で買った・笑)。さすがウィーン・日本外交樹立150年記念展、と思いましたです。


日本・オーストリア外交樹立150周年記念 ウィーン・モダン クリムト、シーレ 世紀末への道
2019/04/24-08/05 国立新美術館
2019/08/27-12/08 国立国際美術館

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