FC2ブログ
2019/01/27

「世紀末ウィーンのグラフィック - デザインそして生活の刷新にむけて」京都国立近代美術館

京都国立近代美術館で「世紀末ウィーンのグラフィック デザインそして生活の刷新にむけて」を見てきました。2016年に同美術館のコレクション展にクリムトの素描(2015年に一括収集したウィーングラフィックコレクション約360点の一部)が出た時、「コレクション全体のお披露目は2018年度を予定しています」と書かれていたので、それをひたすら心待ちにしていました。この展覧会は4月に目黒区美術館に巡回するけれど、どうせなら所蔵館である京都で!と待ちきれずに行ってきました。行ってよかった!

2019012200.jpg

構成は以下の通り。
I ウィーン分離派とクリムト
1. ウィーン分離派 - 展覧会と機関紙『ヴェル・サクルム』
2. クリムト、シーレ そしてココシュカ
II 新しいデザインの探求
1. 図案集の隆盛
2. デザイン研究のプラットフォーム - ウィン工芸学校とウィーン工房を中心に
3. オットー・ヴァーグナーとヨーゼフ・ホフマンそしてアドロフ・ロース
III 版画復興とグラフィックの刷新
1. 木版画の復権
2. 版画の新潮流
3. 素描の魅力
IV 新しい生活へ
1. 日常生活とグラフィック・デザイン
2. 挿画と装丁

昔キャビンってアパレルがあったのご存知ですか?ファーストリテイリングにM&Aされたのち、同じ完全子会社のリンク・セオリー・ジャパンに吸収合併されて消滅してしまったのですが。今回展示されているのは、もともとそのキャビンの創業者である平明暘氏が蒐集したコレクションを2015年に一括購入したもの。300点以上ものコレクションを整理し系統立てて美術展として全作品をお披露目するには、これだけの時間が必要だということも知った次第。2019年1月というタイミングは、日本・オーストリア外交樹立150周年というタイミングとも無縁ではないと思いますが、おかげで2019年という年が最高の形で幕開きました。

ドンピシャ好きな時代すぎて、見ている間中、ガラスの向こう側に恋い焦がれて熱い視線を注ぎ続けました。コレクションの経緯については図録に記載(国立西洋美術館主任研究員 池田祐子氏)されているけれど、京都近美が持つ他のコレクションに連なるものだったことから、こちらに一括購入されたとのこと。おかげでこうして見ることができるわけで、この時代のウィーン芸術が好きな者としてはありがたいことです。

それにしても、これを全部集めて所有し、そして手放す人生って一体どんなだろうか。こういうワンオーナー展はつい元所有者にも気持ちが行ってしまいます。武蔵野美術大学から出品されていたアドロフ・ロースの家具類も元は平明暘氏のコレクションだったそう。

今回は京都近美の自前コレクション展ゆえほぼ写真撮影可でした。上に書いたアドルフ・ロースの家具エリアだけは撮影禁止。空いてたので他の人の電子シャッター音とかも許せる範囲だったけども、スマホならともかくデジカメのシャッター音くらいは普段から消してたらどうかなーとは思う(笑)。私はどうせ図録買うし、爆好きな作品だけスマホの無音アプリで撮りました。たくさん撮りすぎると、それだけで満足して後で見たりアップしたりしなくない?

会場に入ると、まずはリヒャルト・ルクシュ女性ヌードの彫刻2体がお出迎え。なんとなくクリムトの水蛇っぽい。そしてその2体の彫刻の間に窓を見せる会場デザインになっていて、その奥に分離派会館の外観が見えるようになっていました。素敵。会場デザインのみならずチラシや出品リストなども凝っていて、力の入った美術展だというのも伝わってきます。

槇文彦建築のこの美術館、中に入るのは初めてじゃないけど展示を見たのは初めてで、平安神宮の大鳥居が真ん前に見える4階の休憩スペースなどもよいですねえ。お向かいの京都市美術館は現在改装中で覆いがかかっていたのが残念です。再オープンが待ち遠しいなあ。

いくつかメモを。
フェルディナント・アンドリの絵にホドラーっぽいものがいくつか。ホドラーは1904年のウィーン分離派展で作品がメインルームに展示されたそうなので、1905年頃描かれた絵はまさにその影響を受けたと言えそう。

クリムトの素描はウィーン大学の天井画(不採用となりその後ナチスにより焼失)のための下絵たち。コロタイプで複製されたクリムト作品集の一部もありました。

第2章の図案集は、ミュシャを思わせるものもあったけれど、ほとんどはとてもウィーン的でも一体何がウィーン的と思わせるのかなーと考えるとコロマン・モーザーの流れなのかな、とか。

ウルバン・ヤンケのウィーン風景がとてもよかった。

ウィーン工房編によるウィーン・ファッション1914/15の版画を集めた一角は全て女性によるもの。一口にウィーンファッションと言ってもスタイルも表現手法も様々なタイプの版画があって見飽きない。フランスのそれのように洗練されてはいないけれど、自由でふわっと明るい空気がありました。

カール・モルは油画(会場には出てません)も版画も、目指すところが一緒っぽくて面白い。

画家としては分離派の頃の人たちが好きなんだけど、木版画の表現がぐんぐん変わってくる第3章がグラフィックデザインとしてはおもしろかったです。マリー・フォン・ウヒャティウスの「兔」はデューラーから、かな?エルンスト・シュテール「湖」はクリムトへのオマージュかな、とか思いつつ見ました。

ルートヴィヒ・ハインリヒ・ユンクニッケルは前に油画を見たときはさほど惹かれなかったけれど、今回素描や版画をいろいろ見て面白いなーと。今年はきっとまた見る機会があるでしょう。楽しみ。


コレクション展はウィリアム・ケントリッジとロシアン不条理(かな?)から始まりました。映像と音声が入ってこない感じの体調だったので、申し訳ないけどスルーして、冬の日本画から。とは言え、コレクション展のフロア全体にケントリッジの音声が流れる中で日本画やら陶芸やら鑑賞する体験は面白い。

特別展のウィーングラフィックコレクションを収集する理由の1つであった上野伊三郎関連の展示もあり。建築は全く門外漢だけれど、資料の中で世界各国の集合住宅デザイン(住居のデザインのみならす住む人の暮らしのデザインという意味で職場の近くにとか、いろいろ考察されているの)が面白かった。

長谷川潔のマニエール・ノワールは以前どこで見たんだっけ…横浜?なんとも言えず引き込まれる世界。

気づいたら結構な長居をしていました。私の遠征はいつもスケジュールみっちりなんですが、ここは時間をたっぷりとっておいて正解。1階のショップで図録を購入…したのですが、厚さ4センチにビビりました(笑)。重さが1kgくらいで収まっているのはサイズが小さめなのと紙質ですかね。図録に整理するだけでも大変な作業だっただろうなあ。表紙は2種類から選べて、私は白のセセッションモチーフのものを購入。永久保存版だわ。重いので、美術館を出て郵便局へ直行し、レターパックプラスで自宅に発送しました。

すごくよい展示だったからまた目黒でも見られたらいいなー。


世紀末ウィーンのグラフィック - デザインそして生活の刷新にむけて
2019/01/12-02/24 京都国立近代美術館
2019/04/13-06/09 目黒区美術館

コメント

非公開コメント

No title

ゆうさん、こんにちは。
あっらー!京都にいらっしゃったのですか。
案外どこかですれ違っていたかも知れませんね。

職場に回覧で告知がまわってきたので、
面白そうだなあと思っていました。
世紀末ウイーンと聞くと、
学生時代(独文出身です)を何となく思い出しそうで、
回覧止まりなんです。
暗黒時代だったの。。。

Re: No title

ぱくちーさんこんばんは。ハイ、京都お邪魔しました!あっという間に離脱してしまいましたが…
美術館周辺と烏丸御池のあたりをうろうろしました。
ぱくちーさんと知らずのうちにすれ違っていたらと思うと楽しいですね☺️

ぱくちーさんの職場にはそのような羨ましい回覧が回ってくるのですね。独文出身でいらっしゃるなら
私には見えないいろんな背景や文化が、ぱくちーさんには手に取るようにお分かりになるのでしょうね。
いいなー…と言いたいところですが(言ってる)暗黒時代とな…
では無理にお勧めするわけには行きませぬが、京都国立近代美術館の気合が伝わる展示でした。

今年も何度か京都遠征行きたいなーと思っています。てか、たまにはのんびり観光もしたいです。
遠征も楽しいのですが、たまに我にかえると自分は一体何をしているのかと…(笑)