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2018/07/27

「エドワード・ゴーリーの優雅な秘密」八王子市夢美術館

八王子市夢美術館で始まった「エドワード・ゴーリーの優雅な秘密」を見て来ました。2016年4月に伊丹市立美術館から始まったこの展覧会は「約3年をかけて日本各地を巡回」という話ではあったものの2016年度-17年度には東京へ来る気配もなく。遠征を覚悟したところで八王子開催の予定がわかったので、楽しみに待っていました。

構成は以下の通り。
第1章 主著:ゴーリーによるゴーリーの世界
第2章 イギリスの詩・文学とゴーリーの挿絵
第3章 ゴーリーの多彩な創作と舞台美術

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ゴーリーの絵本、私はこれまで接する機会がありませんでした。興味を持ったのは、別の巡回先でこの展示を見たバレエ友が「ゴーリーはニューヨーク・シティ・バレエ(以下NYCB)とバランシンが大好きだったんだって。ゴーリーがNYCBに描いたポスターも出てたよ」と教えてくれたから。

バレエとゴーリーについては後で触れるとして、三章立てながらボリュームたっぷりの展示は、ほとんど知識のないまま展示室に足を踏み入れた私でも夢中になる程充実したものでした。キャプションには絵本のあらすじや背景・解説など鑑賞の手引きがしっかり掲示されていて頼りになります。

壁面展示のほか、ガラスケースには絵本の実物が並び、さらには手にとって読むことができる絵本がセットされたテーブルと椅子も至る所にある、という動きのある展示。それぞれの前でじっくり立ち止まって見つめる人が多いであろう作品が多いので、ガラスケースや絵本テーブルと行った退避?スペースがあるのは良いアイデアだと思いました。

それに、夏休み時期に絵本を題材にした展示ということでお子さんの来場を見込んで、お子さんが覗き込める高さ(低さ・笑)でガラスケースを設置したり、背の届かない展示が見やすいよう、多くの踏み台を会場のあちこちに準備していたり、というようなことも。子供向けの低い位置のガラスケースは私には見るのがちょっと大変でしたが、しゃがんで見たりするのは新鮮(笑)。

私が行った時は平日でそこまで混雑はしていなかったけれどそれなりに盛況ではあって、所々人溜まりもできていました。じっくり見たい展示だからこそ、後ろの人に暗にプレッシャー掛けられるのも、前の人に気を遣われるのも落ち着かない…なので、気づくと皆さんそれなりに前後の間隔を取って快適に鑑賞されていたようでした。ちなみに、読書スペースは展示室の外にも用意されていたので、中で読めなかった人も安心。国内で発売されている絵本は、物販スペースでも扱っていました。


展示を見て意外に思ったのは原画が絵本のサイズと変わらないこと。出版されるサイズに合わせて描いたということなのですが、それゆえにゴーリーのペン画の緻密さ繊細さが損なわれず、絵の解像度というか密度?それが高く保たれたまま子供達に届けられた事がすごいな、と。そして驚くほど修正の跡がない。第2章あたりでホワイトと文字だけ貼り足された原画を見た時に、「あれ?もしかしてここまで修正された原画はなかったのでは?」と気づきました。

ゴーリーが描くお話は残酷だったり救いがなかったりするのですが、子供ってこういうの面白がりますよね。大人も眉をひそめる訳ではなくてどこかクスッと笑えてきたり。シニカルでありながらどこか可笑しくてとても細かい描きこみは、マックス・クリンガーを思い起こさせました。とはいえ実際に起きた凄惨な殺人事件を元にした作品は大変な批判をも巻き起こしたそうです。

それと、、、これは共感してくれる人がいるかどうかさっぱりわかりませんが、人物の描写が『団地ともお』だ!と思ってしまい(笑)。帰宅して雀さんに「『団地ともお』だった」と報告しつつ図録を見せたら、最初は「えー(苦笑)」って感じだったのですが途中で「あ、なるほど」と言いたいことを理解してくれたので、見方によってはそう見える、、、ということで。『団地ともお』が本筋と関係ないところでシュールな絵になるのが結構好きなので、ゴーリーさんの影響だったら面白いなって思うのだけど。

同年代から年配の方が多い、他の美術館と同じ感じの客層がメインだったけれど、制服姿の高校生女子が二人無言で随分熱心に見ていたのが印象的でした。ゴーリーの絵本で育ったのか、あるいは美術部とかだったりするのかな。頼もしい。


バレエとゴーリーさんの話も最後に少し。
展示キャプションによるとお気に入りのダンサーはダイアナ・アダムスだったとか。お目が高い。バレエを題材にした絵本「金メッキのこうもり The Gilded Bat」の原画も展示されていましたが、日本では(少なくとも今は)発売されていないのですね。amazon.comでも探したけどやはり絶版っぽかったです。中古も高くて手が出なかった…。

NYCBとバランシン(NYCBの振付家)が好きすぎて、その公演を見るためにNYに移り住んだと言っても過言ではないそう。そして実際NYにいる間は、ほぼ全ての公演をご覧になったというから凄い。毛皮のコートにテニスシューズ、大きなアクセサリーをつけた出で立ちがトレードマークのようだったとか。絵本にもそれと同じ格好の男性が登場したりして、あれはゴーリーさんご本人なのね。

展示の最後にあった年表で確認したところ、彼が初めてバレエを見たのは1937年、12歳の時。その前年にバランシンがNYCB設立に先立ってスクール・オブ・アメリカン・バレエ(SAB)を設立し、最初の公演を行ったのですが(ゴーリーが最初に見たのがバランシンだとは書いてなかった)、バランシンによるある意味アメリカのバレエの夜明けと彼のバレエへの興味が開くのがほぼ同時だったのも面白いな、と思って。バランシンの死と前後してNYを離れたというのも、きっと必然だったのかも…。

会場には(バレエ友に教えてもらった通り)ゴーリーが描いたNYCBのポスターも展示されていました。あ、これどこかで見たことある。ポワントを履いたバレエダンサーの足が、1番から5番までのポジションを取ったものを並べた絵。
参考:POSTER, NEW YORK CITY BALLET, 1974–75

長い間バレエに親しんだゴーリーですから、NYを離れてからも劇場芸術からのオファーは絶えなかったようです。1979年ブロードウェイで『ドラキュラ』の美術を手がけトニー賞も受賞されているとか。演劇やオペラの衣装デザインをしたり、「ジゼル」2幕を描いた絵もありました。ゴーリーさんをテーマにしたミュージカル(Amphigorey)まであったそうですね!そのポスターも展示されていて、興味津々。展示室にあった図録の絵本をめくったのだけどそのポスターは図録に収録されていなくて(展示内容が会場によって色々なのか、載ってない図版はかなり多かったです)、ならば振付家名を覚えて帰ろうと口の中で唱えていたのですが(受付に頼めば鉛筆貸してもらえたと思うけど無精しました…)展示室を出て物販チェックしている間に飛んでました(とほほ)。

帰宅して調べたらDaniel Levansという人でした。71年に17歳でアメリカン・バレエ・シアターに入団し、チューダー、バランシン、アグネス・デ・ミル、ロビンズ、ノイマイヤー、エイリーなどの作品を踊り18歳でプリンシパルに。75年にNYCBに移籍するも膝の故障でのちにリタイア。バリシニコフが主演した「愛と喝采の日々」にも振付家役で出ているらしい…おおあの人か!下の映画「グリース」の動画で1分30秒のところでセンターで踊るグリーンシャツの男性が彼だそう。チャーミングなダンスを踊る人ですね。

ちょっと話が傍に逸れたけれど、バランシンやロビンズと仕事した人ならゴーリーもよく知った人だったでしょうし、満足いく舞台作品になったことでしょうね。割とヒットしたみたいだし。
新たな知識も得られて楽しい展示でした。


なお常設展示では小島善次郎、大野五郎、清原啓子の作品が展示されていました。清原啓子さんはルドンやモローに影響を受けた方だそうで昨年この美術館で展覧会があった時に見に来たかったのだけど来れなかったから…少しだけでも見られて嬉しかったです。また来よう。

ゴーリー展図録は市販もされています。
エドワード・ゴーリーの優雅な秘密: 展覧会公式図録
エドワード・ゴーリーの優雅な秘密: 展覧会公式図録

早々、物販スペースは大きくないのですが、グッズがいろいろあってつい回遊しちゃいました。印伝山本の美術館限定のパスケースと小銭入れが欲しすぎてだいぶ悩みました。。。


「エドワード・ゴーリーの優雅な秘密」展 2018/07/13-09/02 八王子市夢美術館
巡回予定
2019/01/19-03/10 新潟市新津美術館

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