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2018/05/19

「ヌード NUDE - 英国テート・コレクションより」横浜美術館

横浜美術館で開催中の「ヌード NUDE - 英国テート・コレクションより」を見てきました。土曜日の閉館1.5時間前。人はそこそこいるけど自分のペースでゆったり見られる程度。日本巡回が発表になってからとても楽しみにしていたので、雀さん誘って行ってきましたよ。

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構成は以下の通り。
1. 物語とヌード Historical Nude
2. 親密な眼差し Private Nude
3. モダン・ヌード The Modern Nude
4. エロティック・ヌード The Erotic Nude
5. レアリスムとシュルレアリスム The Realist and the Surrealist Nude
6. 肉体を捉える筆触 Paint as Flesh
7. 身体の政治性 Body Politics
8. 儚き身体 The Fragile Body

一番最初にフレデリック・レイトン「プシュケの水浴」。あれ?この時代から?と一瞬戸惑いました。ラファエル前派・唯美主義あたりの絵が目当だったので嬉しいけれど…この時代が最初に来るってことは、つまり、より近代にフォーカスした展示ってことね。

で、その「プシュケの水浴」。数人のモデルのパーツを組み合わせて描かれた理想の体だそうで、確かに全体のバランスは不思議なところがあったりするのだけど。水鏡に映る足までもが艶かしいのでした。

ジョン・エヴァレット・ミレイ「ナイト・エラント《遍歴の騎士》」。裸の女性の肉体が生々しい。描かれた当時は女性の頭と胴体が騎士の方を向いて見つめあっていたそうで、世間の反発が大きく描き直したとか。常設展示に下村観山が英国留学中に模写したという日本画も展示されていて、見比べる楽しみも。

ドレイパー「イカロス哀悼」。実物を目の前にしたら思っていた以上によかったです。妖精たちの金髪とその手が持つ竪琴の細い弦とが夕日を受けて輝く繊細さ!ドレイパー本当に好き。

アルマ=タデマ「お気に入りの習慣」もようやく初対面。想像していたよりずっと小さな絵でした(大きいサイズを想像してたので)。でも、手前で水浴びをする女性たちから開け放たれたドアの奥の人たちまで、奥行きがたっぷり。それこそ天井の高さまで想像できてしまうような広がりのある絵でした。左側に活けられた紫の花も美しかった。

女性画家アンナ・リー・メリット「締め出された愛」は国に寄贈された女性画家初の作品だったそう。結婚の3ヶ月後に亡くなった夫を追悼した作品で、クピドがなんとかこじ開けようとしている扉はお墓なのだとか…。


第2章はヌードを描くのに神話や歴史画を必要とせず、日常を切り取ったような裸体が描かれるようになった時代。ドガ、ルノワール、ボナールなどの印象派から。ボナールのバスルームシリーズは以前はさっぱり良さがわからなかったのだけど、最近は割と好き(ということで今年後半の国立新美術館ボナール展も楽しみです)。

グウェン・ジョンはモデルの少女と相性が合わなかったようで、そんな少々緊迫した関係がモデルの視線からも透けて見えるよう。ネヴィンソンのアトリエの絵はどこか高いところから見下ろすような目線が不思議な効果を生んでいたように思います。大きな窓のせいかしら。後ろ姿のモデルが黒猫を撫でていて。マティスは第2章に裸婦像2作、第3章には珍しい感じの習作が1枚。

第3章は表現の多彩さ。絵画も面白いけど、彫刻の抽象表現が楽しい。その後にたちあらわれる、第4章のロダン「接吻」の凄み…。鋳造でない、大理石の彫刻ならではのパワー。しかしまずはロダンを囲むように展示されているターナー、ホックニー、ピカソ、ルーズ・ブルジョアを。ホックニーのシンプルな線で構成された淡々として見える版画が巻き起こしたであろうセンセーションを思う…。それとほぼ同時代、ホックニーとは反対にみっちり描きこまれたピカソの版画もすごい。版画の技法を見るたびに「えっと、これはどういう技法だっけ」ってなるので、西洋美術館の版画のガイドブックみたいなの、あれをそろそろ買わなくちゃ…。

そして「接吻」。この作品だけ撮影可。大理石の肌が艶かしく輝くのはライティングの素晴らしさが大いに貢献しているのでしょう。ぐるっと360度見て歩けるのがいい。いろんな人がいろんな角度から写真を撮っているので、それぞれが何を面白いと思っているか可視化される面白さもありました。

第5章。デルヴォーさんの「眠るヴィーナス」はいつものモチーフたちなのだけど、他の作品より女性の肌に血の通っている感があって、意外に思いました。あれは凄くよいデルヴォーさんでしたわ。月光の淡い光に照らされて眠るヴィーナス。バルテュスは意外に存在感薄めでしたが、デルヴォーに連なる、眠る女性。

このあたりから男性も女性も肉体そのもの、そして政治性があらわになって来ます。ベーコンは富山県美と東京近代美術館から。バークレー・ヘンドリックスの黒人男性の裸体絵は、マティスのオダリスクのように片膝を立てたポーズ。背景の美しいタイルと白い長椅子、褐色の肉体と目を引く美しい色配置なのだけど…絵の中の男性に問われているかのよう。「それで少しはマシな世の中になったのか?」って。

このあたりでふと気付きました。他の美術展と比べて年配の男性が一人またはカップルで来ている比率が高くて、男性ヌード絵の前は、殿方はみなさん素通り(笑)。

ジョン・カリン「ハネムーン・ヌード」はヴィーナスの誕生(ボッティチェリ)を思わせる髪。顔のベースに自画像を入れているらしい。リネケ・ダイクストラの連作写真は、出産後1時間、1日、1週間の女性と子供を収めたもの。1時間で立って写真に写るって日本人には無理だよね…。この連作は生命力に溢れていて、批判性より賛美が見えた気がします。

後で気づいたのですが、どの章にも男性女性両方の作品があり、描かれたヌードも男女ともに並んでいて、その点もよく考えられていたように思います。題材が題材なだけに、入念な準備で開催されたのだな、と。


たっぷり楽しんでも、その後に負けないボリュームの常設が待っているのが横浜美術館の良いところ。

近年の収蔵品に藤田の「腕を上げた裸婦」があり、6/4までの展示とのこと。他にも藤田2点。原三渓の自筆書簡には「堀内恒男氏寄贈」とあって「え??」と驚いたんだけど、野球は恒夫さんよね(笑)。

長谷川潔の作品をまとめてしっかり見たのは初めてかな。版木や道具などあちこちで展示を見るのだけどちっとも覚えられないので…やっぱり版画ガイドブック必要だわね(2回目)。

今回はシュルレアリスムの部屋にも日本画が並んでいて、日本画大特集という感じ。松井冬子のあの絵が見られたのが良かったし、物語や歴史人物画など親しみのわく題材が並んでいたのも、縁遠い日本画を身近に感じるきっかけになったかも。

写真の部屋は土田ヒロミのヒロシマシリーズが印象に残ります。横美のコレクションは、本当にいつ見てもハズレがなくて良いです。

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