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2018/04/03

「至上の印象派展 ビュールレ・コレクション」国立新美術館

国立新美術館で「至上の印象派展 ビュールレ・コレクション」を見て来ました。印象派だし既にNHK日曜美術館でも取り上げられているので混みそーだなーと恐る恐るだったのですが、ほどほどの入りで快適鑑賞でした。この調子ならGWに入るまではそんなに大混雑ってことにはならないのかも。

スイスの実業家エミール・ゲオルク・ビュールレのコレクションは1990年に横浜美術館で「開館1周年記念 西洋の名画展 スイス ビューレー・コレクション特別公開」として初公開されて以来だったそうですね。この度ビュールレ財団の作品が全てチューリヒ美術館に移管されるということで、個々の絵は今後も日本で見る機会はあるだろうけど、コレクション全体を見る機会としては最後ではないか、と言うことで行って来ました。

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構成は以下のとおり。
第1章 肖像画
第2章 ヨーロッパの都市
第3章 19世紀のフランス絵画
第4章 印象派の風景 - マネ、モネ、ピサロ、シスレー
第5章 印象派の人物 - ドガとルノワール
第6章 ポール・セザンヌ
第7章 フィンセント・ファン・ゴッホ
第8章 20世紀初頭のフランス絵画
第9章 モダン・アート
第10章 新たなる絵画の地平

全64点と言うことで、出展数は少し控えめ。その分、広い空間で作品同士の間隔も余裕があり、じっくり見られました。肖像画ではアングルの描いたアングル夫人にまず目が行きました。だって画風が他の作品とぜんぜん違う。こちらを見つめる夫人の穏やかな表情は、彼女と画家との間の信頼が感じられますが…どうやら未完成とのこと。注文やサロンのためではなくプライヴェートで描かれたものではないかとのことで、その親密さにも納得。

ドガは踊り子や労働階級の女性を描くときと、友人などの女性を描くときがあからさまに違う人だけど、「ピアノの前のカミュ夫人」は後者。パリジェンヌ展でステヴァンスが描いたピアノには長いろうそくがセットされた燭台が描かれていたけど、こちらの燭台は数センチ残したくらいの短さ。光源は別のところにあるよう。楽譜が意外にくっきり描かれていて(ベートーヴェンらしい)驚きました。こちらを振り向いたカミュ夫人の表情から、ドガとの仲の良さが伺えました。

第2章はヴェネツィアの風景画から。カナレットなどと並んでシニャックがサンタ・マリア・デッラ・サルーテ聖堂を描いたものがあったけど、光に霞むようなクーポラがおなじみの点描だけでは表現しきれなかったのかうっすら輪郭が描かれていたのが印象的でした。モネのウォータールー橋も陽を浴びて輝いていて、目を細めたくなるほど。照明のせいもあるのだろうけど、しばらく時間をおいてこの絵の前に戻って来たら、太陽の動きに合わせて陽の当たり具合が変わっているのではないかと思うほどでした。

第3章。まずはコロー「読書する少女」。今回イレーヌ嬢の次に気に入りました。コローは元々好きなのだけど、人物画はそれほどでもなかったのです。が、これはすごくいい。ルーヴルの「真珠の女」よりずっと好き。茶系の室内で本に視線を落とす少女の赤い上着と髪飾りが映えるのがたまらなく魅力的なの。

第4章も光。ピサロ「ルーヴシエンヌの雪道」は陽の落ちかけた午後なのかなぁ。雪に映る光がほんのり朱を帯びているような。西の外れとはいえ東京で暮らす私には根雪の中で暮らす経験がないから、この空気に実感が持てないけれど、眩しさだけは分かる、、かな。マネの印象派っぽい屋外の絵とモネの花いっぱいの屋外の絵が並ぶのも良かった。

第5章、ドガとルノワール。お目当のイレーヌ・カーン・ダンヴェール嬢はここにいました。なんという別嬪さん。渾身の絵筆で描いたこの美しい少女の肖像画が、注文主のご両親に気に入られなかったとは、今の感覚ではありえないことだけど…当時としては致し方ないのかもしれません。でも、当のイレーヌさんはどうだったのだろう。

第6章セザンヌ。すごい人なのは分かるけど、あまりピンとこない永遠の初心者でございます。赤いチョッキの少年は、腕が長すぎない?とか思う審美眼のなさ。

第7章ゴッホ。ゴッホは花の絵からも発散される力強さ、パワーが好き。ここにはマロニエが。

第8章。ヴュイヤール「訪問者」。暖炉の黒いフレームと、椅子に腰掛けてこちらをみる女性の黒いコートが強い印象を残します。でも、なぜ暖炉のそばでコートを着ているのかしら。彼女の背後の壁にかけられたグレーのコートはヴュイヤールのかな。ゴーギャン「肘掛け椅子の上のひまわり」はゴッホを思い起こさせる肘掛け椅子とひまわりという二つのモチーフ。その後ろに飾られた絵はタヒチの風景なのかしら。

第9章モダン・アート。と言ってもビュールレ氏のコレクションの大半は1940年以降亡くなる1956年までの間に収集されたものだそうで、当時のコンテンポラリーアートにはあまり興味がなかったとか。だからせいぜいヴラマンク、ドラン、ピカソ、ブラックくらいまで。困惑するほどわからないような絵がないのが、一代で集めたって感じで納得がいきました。

そして最後の部屋がモネの睡蓮。ここだけ撮影可だったのでみんなスマホを掲げていました。じっくり間近で見たかったのだけど、端の方からしか眺められなかったのが残念。撮影者に気兼ねせず見るなら、開館と同時に入ってまず最後の部屋でじっくり見るしかないのかも。オランジュリーの睡蓮たちより花がたくさん咲いていました。

2014年から15年にかけてのチューリヒ美術館展で来ていた大きなサイズの睡蓮も、ビュールレ氏が購入してチューリヒ美術館に寄付したものなのですって。同じ人が買ったモネの睡蓮が、日本の同じ美術館に数年おいてやって来たの、面白いな。


今回はイレーヌ嬢が見られただけでも満足ではあるのですが、コレクションとしては「はーこの邸宅に飼い猫になって暮らしたいわ」と思うところまではいかなかったかな(何様?)。個人コレクションって集め方に個性が出ますよね。ものすごい数の作品を20年足らずの間に買い集めた(しかもその3/4は亡くなるまでの最晩年6年間で集めたとか)のはすごいことだけれど、今回来た絵からはこの収集家に親しみを感じたり共感したり、まではたどり着けなかった、という意味で。(例によって解説全く読まなかったせいもあるかも)

購入した図録に載っていた個人コレクターの話が面白かったので、機会があればそれぞれのことをもう少し知りたいなと思います。


至上の印象派展 ビュールレ・コレクション」国立新美術館
2018年02月14日(土)〜2018年05月07日(日)
この後巡回あり。
九州国立博物館 2018年05月19日(土)〜07月16日(月・祝)
名古屋市美術館 2018年07月28日(土)〜09月24日(月・祝)

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