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2017/12/16

「怖い絵展」上野の森美術館

上野の森美術館で今週末まで開催中の「怖い絵展」、開館時間が延長される前の11月に見ています。いや、見たっって言っていいのかなあ…。オーディオガイドも借りず、キャプションもほとんど読まず、版画はパスして、見たかった絵をメインに見て回っただけなので、「体験」はしていないと思う。

先に開催した兵庫県立美術館でも大人気だったようですが、キャパの小さな上野の森美術館でも開幕から大混雑。台風の影響で大雨の週末さえ入場待ちの時間が長かったそうだし。入場締め切り時間が近くなると行列もほぼ収束する感じだったので私はその時間帯を狙って行きましたけど、会期間際の最近は冷え込みも厳しいし、夜もそこそこ並んでいるようです。他の美術展よりだいぶ客層が若いとのことなので、それは良いことですよね。

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構成は以下の通り。
第1章 神話と聖書 Mythology and the Bible
第2章 悪魔、地獄、怪物 Devils, Hell, and Monsters
第3章 異界と幻視 Other Worlds and Visions
第4章 現実 The Real World
第5章 崇高の風景 Sublime Landscapes
第6章 歴史 History


中野京子さんの「怖い絵」シリーズから発展した美術展ということで、シリーズの愛読者としては本当に楽しみにしていました。本当は音声ガイドまたはそれぞれの絵に添えられたキャプションをお供にじっくり絵画を楽しみたい展示ではありますが、入場行列をクリアした後にオーディオガイド行列があったりもするようで。

あまりの混雑で近づけない絵があるくらいで、特に版画はみんな近づいてじっくり見るから…ということで版画はほぼ諦めて目当てだけはしっかり見てこようと。あとは人の頭越しで見ながら気になるものは前が空いた時にしっかりと。自分の身長が高くてよかったと思う数少ない瞬間の1つですね(笑)。人気のある絵の前もすーっと人が引く時間帯はあるので、そんな感じで見てきました。


第1章はオルフェウスだのオデュッセウスだの私好みの題材が続きます。ウォーターハウス「オデュッセウスに杯を差し出すキルケー」。鏡に映るオデュッセウスとキルケーの足元に転がる豚に変えられた部下たち。ウォーターハウスらしくドラマティックな絵ですよね。

そしてドレイパーの「オデュッセウスとセイレーン」。全く、オデュッセウスを待ち受ける苦難には恐ろしい美女たちが次々と登場するもので。美しい歌声で船人を惑わせて遭難させるセイレーン。オデュッセウスはその歌声を聴いてみたいという欲望に勝てず、船のマストに自分を縛り付けさせ、船員たちは蜜蝋で耳を塞がせて歌声が聞こえないようにして船を漕がせるという(笑)。歌声をきいて惚けた表情のオデュッセウスがちょっと可笑しい。

フュースリの雷神トールの絵は何年か前のロイヤル・アカデミー展でも見たもので、その時の展示はグッと見上げる高さだったせいか、今回より迫力があった気がします。第2章の同じフュースリ「夢魔」ヴァッサー大学フランシス・リーマン・ロブ・アート・センター所蔵のミニチュア版でした。

ファンタン=ラトゥールの「ヘレネー」と「聖アントニウスの誘惑」はプチ・パレから。後者は同じテーマの作品をいくつか見た中では一番女性が神々しく描かれている印象。版画は本当に人がみっちりだったけど、クリンガーだけはなんとか見ました。「死について 第一部」「手袋」連作は兵庫県美から、「死の島」は高知県美から。

今回の「怖い絵」展を見た人たちの感想で名前がよく挙げられていた人の中にチャールズ・シムズがいますね。4作品もまとめて見たのは初めてです。「クリオと子供たち」は前述のロイヤル・アカデミー展にも来ていて、その時に気になって作品をあれこれwebで見て気に入っていたのだけど…いかに私には何も見えていなかったかに今回気づいて呆然としました。タッチとか色合いとか、そんなところばかり見ていたのね(まぁそれはきっと、今後も変わらないのだろうけど…)。

現実に起きた、起こりうる悲劇を描いた第4章はまた違った怖さ。セザンヌのイメージとはかけ離れた「殺人」、シッカート「切り裂きジャックの寝室」。

第5章にはモローが2点(モロー美術館)。「ソドムの天使」は写真では拾えないものがずっと知りたかったのです。二人の天使がソドムの町をどう見下ろしているのか。実際に絵を前にしても、はっきりとは描かれていないのだけど、彼らが毅然と、厳かにそこにいるのはわかりました。町が派手派手しく焼かれているわけではないのが、余計に怖い。「ヘレネー」とともに、モローの筆の巧みさを堪能。

重々しい第5章から、怖さと美しさが共存する第6章へ。18世紀から19世紀の艶やかな絵肌を堪能。コールドロンの「何処へ?」が来ると知った時は、どういうストーリーなのかようやくわかる!とワクワクしてたけど実際のところどういう場面かは定かではなさそう。ただ、コールドロンがこの絵を描いたのは、アン・ブーリンが幼少期を過ごした場所とのこと…何か関係があるのかな。

そして、ドラローシュ「レディ・ジェーン・グレイの処刑」。わかってはいたけど、実際目の前に知ると、とても大きな絵。中央で、目隠しされてもなお光り輝くように美しいジェーン・グレイ。心もとなく伸ばした両手。手前に敷かれた藁、泣き崩れる侍女が手にする女王の首飾りとガウン、侍女地震の顔まわりを飾る真珠の輝きのリフレイン…。


私が行った時は16時半最終入場の17時閉館の頃で、16時過ぎに着いて並んだのは15分程度だったかな。結局30分くらいの駆け足で見て回ったことになりますね。私の場合、企画展に掛ける時間は大抵40分前後だから、場内の混雑を考えればあっという間に出て来た感覚。見た気がしないといいますか。面白かったし、よくぞあれもこれも持って来てくれましたった思うけど、会場だけはどーにかならなかったのかと(笑)。来年同じ会場でフェルメール展を開催するそうですが、さすがに時間指定予約制を導入するとのこと。そりゃそーでしょう。8点も来るらしいし、混雑の比は「怖い絵」どころではないよね。

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