FC2ブログ
2015/10/26

見た美術展 2015 その2

書きそびれ美術展の覚え書きその2。これは夏の弾丸編。


ムルロ工房と20世紀の巨匠たち パリが愛したリトグラフ」島根県立美術館
15102705.jpg

夏に島根→広島弾丸旅行をした際に宍道湖畔にあるこの美術館、よーやく訪れる事ができました!予想以上に素敵な場所だったのに、展示もよすぎて夢中になってしまい、時間切れで建物と外のお庭をほとんど堪能できず残念。島根は弾丸する場所じゃなかったわ!次はゆっくり訪問するぞ、と強く決意。

ムルロ工房展は、DIC川村記念美術館(千葉)、神奈川県立近代美術館葉山、島根県美術館、北九州市立美術館分館と巡回している展示なのですが、佐倉と葉山で行きそびれたものの、どーしても見たかったので島根まで。版画を地方まで追い掛けるのはやめにしようと何度も思ったのですが、行ってよかったです。マイルがなかったら諦めてたと思うけども。

ムルロ工房と画家たちの密な関係と時代が変わるにつれて広がる表現、出品されている画家の好み度の高さなど…あちこちで見てきた展示とも音を立ててリンクしていくような感覚があって、ぼんやり見てきたものでも集積するとそれなりの財産になるのだなとも(笑)。

工房ゆかりのプレス機本体や使われた資材?なども展示されていたのですが、展示室の外の陽光溢れるロビーにて、このプレス機が現存する…金沢美術工芸大やったかな?そちらのデモンストレーション映像があって、見入ってしまいました。こういう作業映像って何よりも説得力がありますよね。以前見た伊勢型紙のビデオも今も突如頭の中で再生される事がある…

全点収録ではなかったので図録は買わなかったのですが、今もそれをちょっと後悔しております。まだ通販で入手可能ではあるのだけど。。どうしようかな。出品されていたのはほとんどが日本の美術館から。一部個人からも。版画なのでそんなに大きなサイズのものはないけれど数は多かったので見応えありました。

コレクション展も素晴らしく、いいものをお持ちです。日本画・洋画・西洋絵画・版画・工芸・写真・彫刻・小企画…とそれぞれにテーマ展示があって豊かな時間を過ごせます。西洋絵画は「コロー、クールベ、モネ…絵になる水辺」というテーマ。この美術館らしいですね。松江の街の印象とこの美術館のそれとで、ほんの一時ながら大好きな街になりました。豊かな土地だなぁ。


広島・長崎 被爆70周年 戦争と平和展」広島県立美術館
15073001.jpg

被爆70年、戦後70年のこの夏に広島でこの展示を見た事は、思ってもみなかった程に自分の中に大きなものを残したようです。第1室は東京富士美術館のナポレオンコレクションから。ゴヤ「戦争の惨禍」、オットー・ディックス「戦争」、ケーテ・コルヴィッツへと続く版画群はこだまする悲痛な叫びのようでした。それぞれ、いろんな文脈から展示されたものを見てきたけれど、今回は…。たぶん今後もいろんな場所でいろんな文脈で見ていくだろうけど、特にケーテ・コルヴィッツは見る度にこの日の広島県美の展示室のひんやりした空気や照明の感じとこの感情とが蘇るのだろうと思います。そういう体験だった。

その後は、戦争に大きな影響を受けた画家たちの絵が並びます。忘れがちだけれど、私が好きな時代の画家たちはみな戦争に人生を左右された人たちで。富士美のコレクションからはキャパの写真も来ていました。そういえばピカソの「鳩」は、松江ではムルロ工房の作品として、広島では「第1回世界平和会議」ポスター原画として、展示されていましたっけ。こういう、光の当て方の違いは美術展を回る楽しさでもありますね。

章が進んでいくと、日本人画家による戦争絵画が並んでいました。通常非公開のものがあったり…所蔵元がよく見るところとは全く違うのが、これらの絵の置かれた立場を照らしているかのようにも思われて。

広島・長崎をテーマにした展示の部屋に移ると、途端に生々しい叫びや祈りに囲まれたよう。広島県美、長崎県美、そして広島平和記念資料館などが蒐集したものが並ぶのですからボリュームもあるし、様々な表現手法のものがありました。平山郁夫「広島生変図」を目の当たりにしたのは初めてのこと。あの熱量をあびた後では、灼熱の広島の街も違って見えるようでした。

東松照明や石内都の一連の写真シリーズは被爆の悲惨さと現実と時の流れを切りとったものではあるけれど、撮る人の敬意と優しさに救われます。宇佐美雅浩「早志百合子 広島 2014」が締めくくりとして素晴らしく。赤ちゃんを抱いて座る喪服姿の早志百合子さんを中央に、右側が喪服軍団(原爆投下時?)、左が赤ちゃんと楽園のような原色の花と原爆ドーム。

常設は「日本とアジアの工芸作品 つながる心 平和の礎」。ウズベクの経絣(ハンアトラス)の衣装がマティスが手掛けたバレエリュスの衣装っぽくて印象に残っています。


「ユトリロとヴァラドン 母と子の物語」ひろしま美術館
15102704.jpg

東京で見そびれたもの。ヴァラドンの力強く伸び伸びした筆致が記憶に焼き付いています。彼女の迷いのない線と明快な色遣いが、私にはとても好ましかった。ちょっとフォーヴィズム的なところもありますね。描かれた女たちもたくましく目に力が宿っていたし、本人も奔放なエピソードに事欠かない人。

そんな母を愛し、自分の事を見てほしいと願い続けたユトリロ。酒におぼれたユトリロがリットル単位でワインを飲むので「リットリロ」と呼ばれていた、というのはよく知られたエピソードなのかしら?私は今回初めて知って笑いを堪えられませんでした。ユトリロの白の時代以降の絵が好きだけど、ここでは母の絵があまりに生命力に溢れているので息子は分が悪かったかもしれない。

つくづく興味深い親子であることよ。
図録は写真が数枚、画質が悪い(ピンぼけ)のがあって、それが惜しかったわ。。

お楽しみの常設は今回も至福でした。フジタが5枚出てて、前回来た時には見られなかった「裸婦と猫」と「アッシジ」が見られたのが嬉しかった。このコレクションがいつでも見られる広島の人たちが羨ましいわ。


箱根編に続く。

コメント

非公開コメント