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2014/11/11

「フェルディナント・ホドラー展」国立西洋美術館

国立西洋美術館で開催中の「フェルディナント・ホドラー展」見てきました。英語で添えられた副題が「Towards Rhythmic Images」。平日午後遅めの時間帯でゆったり見られたのがよかった。日本・スイス国交樹立150周年記念で今年はスイス関係の優れた展示が多くて幸せ。

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構成は以下の通り。
Part 1 光のほうへ - 初期の風景画
Part 2 暗鬱な世紀末? - 象徴主義者の自覚
Part 3 リズムの絵画へ - 踊る身体、動く感情
Part 4 変幻するアルプス - 風景の抽象化
Part 5 リズムの空間化 - 壁画装飾プロジェクト
Part 6 無限へのまなざし - 終わらないリズムの夢
Part 7 終わりのとき - 晩年の作品群


スイスの象徴派として名前が挙がるホドラーの絵は何点かは知っていても、ホドラー本人の事は全く知らないままに会場へ。他の画家たちのように拠点を海外に移す事なく生涯スイスに住み続け、紙幣や壁画なども手掛けていて、スイスの人たちにとっては「国民画家」なのだそうです。副題にリズムって言葉があるけれど、リズム、音…そういうものが見える絵を描く人でした。

今回見た中では、ホドラーが描く植物の絵が凄く好きでした。バレエ/ダンス好きとしては、人物のムーヴメントの描き方にも非常に興味をそそられます。好きというよりは興味深い、という感じだったけれど。象徴主義っぽい絵をもう少し見たかったなーという点では物足りなさもあったものの、「リズム」という副題にあっては仕方がありませんね。でもそのおかげで、モダンダンスを見ているような空間が堪能できて楽しかったです。全部見終わった後もホドラー本人にはあまり近づけた感じはしなかったけど、それは私が「見たいようにしか見なかった」からだと自覚しております。スミマセン。


という事で気に入った絵。第1章では「小さなプラタナス」。実際はもう少し黄味がかった青い空。この広陵とした大地にすっくと伸びるプラタナスに強い生命力があって、風のある日はきっとひゅうひゅうと枝を鳴らして黄葉をはらはらと散らしながら踊るように見えるに違いない、と。「マロニエの木々」も。描かれたのは静かな情景なのに、見る側に何か変化を予感させるものがあるのかしら。一緒に並んでいた柳の木がある風景画からも同じような印象を受けて、この一角はとても好きでした。いやー、この美術展期待できるわ!とテンションアップ。

しかし第2章の人物画からは音はぱったりと消えてしまっていました。音楽の代わりに、ホドラー自身の内なる声が聞こえてきそうではあったけれど。やはり植物の描写が好きで、「アハシュエロス(永遠のユダヤ人)」や「傷ついた若者」(見るところを間違えているのは自分でも分かっているのだけど)この木々の描き様を見て、何だかシーレっぽい気も。時代としては重なるしウィーン分離派にも関わりのある人なので、そちら方面との類似性があっても不思議ではない、よね。
象徴主義の側面を見せるという第2章だったけれど、あまりそれらしい絵がなかったのは残念。


第3章はモダンダンスの世界でした。バレエに代表される天上の美ではなくて、モダンダンス的な…内側から突き動かされて裸足で踊る衝動のような。何かが降りてきて踊っているような。

まずは「オイリュトミー」。大きなカンヴァスいっぱいに、白い装束姿でうつむき加減に歩く男性5人。西洋美術館の庭にいるロダンの「カレーの市民」みたい。ほとんど余白なく画面に詰め込まれた男性たちなのに、まったく圧迫感を感じない構図。男性たちが歩く先にも後にも道が続いていると、見る側が確信できるからでしょうか。彼らが纏う服の裾の描き方や、真ん中の男性の感じが、何となくクリムトやシーレを思わせる処理。両脇にすっくと立つ木々が額縁みたい(後の章の風景画の雲に通じる、かも)。私が好きなのはこういう装飾性だ、と再認識。ちなみに、オイリュトミー(=良きリズム)という言葉は舞踊系でも耳にする言葉でござます。

この作品にに呼応するかのような「感情 III」。画面一杯に咲いているのは赤いポピーの花。解説によれば「豊穣や美を暗示する」のだそうだけど、第一次大戦のリメンバランス・デー(11/11)が近かったので戦死者を象徴する意味合いの方を強く感じてしまいました(ホドラーがこれを描いた1905年はまだ第1次大戦は始まってもいなかったので、彼がその意図を持っていたハズがない)。描かれた女性たちから「生」のイメージを強く受けたのはホドラーの意図通りだとしても背景の意味を違うように受け取ってしまって、逆に印象を強くした絵でした。

そういえば、ホドラーが描く裸体って不思議とエロスがない。上の「感情III」もそうだし、「昼 III」も。シャーマニズム的?


第4章。大きくて真っ白な展示室一面に、スイスの風景画。湖や山々の上にかかる雲が踊ってました。素朴なグラフィックデザイン的な面白さがあって、どの絵がっていうのではなく展示室全体が贅沢でユニークな空間になっていました。天井の高い広々とした空間で真ん中に立って、ぐるーっと見渡したら至福でした。

第5章には大原美術館にあるのと同じ主題の「木を伐る人」。これ、スイスの紙幣に使われていたそうで、紙幣も展示されていました。音が聞こえそうな絵ですよね。この絵を見ると、この人にライブで銅鑼叩いてほしいなーって思うのよね。。いい音しそうなんだもん。ハノーファー市庁舎の壁画「全員一致」の様々な習作は圧巻。賛成の挙手を天に突き上げる人々はそれぞれポーズが違っていて面白い。そこからうねる民主主義の力。


第6章は、チューリヒ美術館の階段吹き抜けの壁面を飾る「無限へのまなざし」の習作など。実物大のモノクロポスター(じゃないな、何ていうんだろう。。布に印刷したもの)や、制作中のホドラーの写真、美術館のその部分を撮影した映像などもあり。この壁画もいいけど、吹き抜けの装飾が素敵だった。行ってみたいわー、チューリヒ美術館。美しいオペラハウスもあるしね。。。

最後の章は、愛人の死と自分の死。癌におかされた愛人が自分の子を身ごもり、その愛人をひたすら描き続けたらしい。モネも死にゆく妻を描いていたし、画家とはそういう生き物なのでしょうね。彼女が亡くなった後、ホドラー自身も健康を損ね、外で絵を描く事ができなくなっていったそう。窓越しに描いたという「白鳥のいるレマン湖とモンブラン」は、やはり白鳥たちの配置が特徴的。そういえばレマン湖を英語でLake Genevaというのは今回初めて知りました(お恥ずかしい)。

面白い展示でした。今度はぜひ象徴派的傾向の強い絵をたっぷり見てみたいものです。そんな機会があるといいなぁ、何しろ今回の回顧展、日本で40年振りだそうなので。東京のあとは兵庫県美へ巡回するそうです。


フェルディナント・ホドラー展
2014/10/07-2015/01/12 国立西洋美術館
2015/01/24-2015/04/05 兵庫県立美術館


おおそうだ、常設もいつも通り堪能しました。版画素描室は「ネーデルラントの寓意版画」。

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