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2014/08/14

「ヴァロットン - 冷たい炎の画家」展 三菱一号館美術館

今年は日本とスイスの国交樹立150周年だそうで、芸術交流も殊更に盛ん。音楽方面はあまり把握していないけれど、バレエだとローザンヌに本拠地があるベジャール・バレエが来日するし、美術関連はちょっと思いつくだけでも、バルテュス、ヴァロットン、チューリヒ美術館展、ホドラー、ルドルフ・シュタイナー、、、などなど目白押し。ありがたい事でございます。

ということで、これも鑑賞から1ヶ月くらい経っていますが、三菱一号館美術館で開催中の「ヴァロットン - 冷たい炎の画家」展を見てきました。今年一番楽しみにしてた美術展かもしれない。でもって、その期待を裏切らないどころか期待を遥かに超える展示でした。


felixvallotton.jpg


パリのグラン・パレとアムステルダムのゴッホ美術館から巡回してきたもので、主催には三菱一号館を含む巡回3館とオルセー美の名前が連なります。ヴァロットンの回顧展は日本初だそうで、これに間に合った事がとても嬉しい。世界のあちこちから集まった作品と三菱一号館が所蔵する版画から構成されていて、至福としかいいようのない空間でした。

構成は以下の通り。
1章 線の純粋さと理想主義
2章 平坦な空間表現
3章 抑圧と嘘
4章 「黒い染みが生む悲痛な激しさ」
5章 冷たいエロティシズム
6章 マティエールの豊かさ
7章 神話と戦争


時系列ではなくテーマ別の展示。「わー、この絵が来てる!」と一々テンションが上がり、次にどの絵が来るのかとワクワクして仕方ない。早く次が見たいと気が急くけれど、同時に今目の前にあるこの絵からも立ち去りがたい。もうどうしたらいいのか分からないくらいに興奮して(笑)、回遊魚のごとくウロウロしまくりました。この画家の描いたものに対する私の並外れの好意は、一体何なのでしょう……。


最初の部屋には、オルセーから「化粧台の前のミシア」が。これは2010年のオルセー展にも来てたらしいのですが、全く記憶になく(笑)。ミシアといえば、バレエ好き的に言えばバレエ・リュスに資金援助をしていた事が真っ先に浮かびますが、画家たちのミューズでもあって、数年前にパリでミシアをテーマにした美術展があった。。。ハズ。

第2章には「ワルツ」が。リンクしている所蔵館の画像は色調も違ってオリジナルの良さを再現してはいないのだけど……。描かれた人々の夢のような浮遊感と、吹きつけなのか?散らばる色の粒子がその儚さを強調するようで大好き。

月の光」。いっとくけどリンク先のWikiArtの画像は、オリジナルの素晴らしさは1つも再現されてないよー。でも仕方ないよね、実物見ないと。月の光を反射する夜の雲と、それを映す地上の水辺と。美しさと、どこか底なしの不気味さと。誰でもこんな夜の記憶があるのではないだろうか。私の記憶にある夜の、ヒンヤリとした空気が蘇る。

残照」。これも「来てるんだ!嬉しい!」という絵。会場内で別の絵が飾られたついたての向こうに、この絵がまた見えたりしたのもドキドキした。

ボール」。これも2010年のオルセー展に来てたらしいけど以下略。メインヴィジュアルに使われている絵で、たぶん日本では一番知られたヴァロットン作品かも。何となく、少女が追い掛けるボールがもっと赤くて大きいと思いこんでいて、オリジナルを見て「そうなんだ」と。あと、実際にこの目で見ると、左上にいる女性達に思った以上に視線が吸い寄せられる。

夕食、ランプの光」。ヴァロットンの不幸な結婚を象徴する絵のように言われているけれど、so what?と思っている。手前の大きな影が画家本人で、右手にいるのが妻、正面からこちらを凝視しているのが妻の連れ子だとか。誰も視線が合っていないけれど、食卓を明るく照らすランプの猫にほほえまずにはいられない。

貞節なシュザンヌ」。古くから絵画のモチーフになっているシュザンヌ(貞淑な妻スザンナが好色な老人たちに水浴を覗かれる旧約聖書の場面「スザンナと長老たち」の事)も、ヴァロットンに掛かると娼婦が男性たちと「商談」している絵に(笑)。実物を見ると、殿方の頭の光を集める部分が、白絵の具をちょんと簡単に置いただけのように見えた。
この絵に限らずヴァロットンの室内画は凄く好みで、徹底的に傍観者の視線で細部まで室内装飾の描写を仕上げているところがたまらない。


版画は三菱一号館の所蔵品。これだけまとまった数のヴァロットン版画を持つ美術館は他にないそう。「親密さ アンティミテ」シリーズをまとめて見られたのは至福。ヴァロットンの男女を描いたものは大好物です。ヴァロットンの版画はシニカルで構図がよく、モダンで白と黒のメリハリというかバランスが秀逸。

あと、ヴァロットンの描くヌードも特徴的。どうやら尻フェチのようだけど、やっぱり私はso what?とつぶやきながら見るのでございます。神話モチーフはどれもユニークに翻案されている。ここまでイロイロ見てきて何となく感じていた事だったけど、もしかしてヴァロットンってちょっと照れ屋さんなのでは。アイロニーたっぷりだったりどこか斜に構えたりした絵を描きながらも、どこかにユーモアを込めずにはいられない人なのかも。。などと。

最後には、戦争をテーマにした油画や版画が。美術展の最初と最後に飾られた3枚の自画像に、その間に生み出された沢山の作品を思う……。充実した展示でした。ぜひぜひお勧めしたいです。


コレクション展示として同館所蔵のナビ派の作品がいくつか。この所蔵品展示については出品リストに出ていなくて記録がないのが残念すぎる。中でも別格の扱いだったドニの大きな作品「純潔の春」は今回初公開とのこと。検索してみたら、2012年にWacoal Corp.の所蔵品として海外に貸し出された記録を見つけました(海外アートブログで)。日本の美術館に入ってよかったわー。三菱一号館は所蔵品の展示自体はあまり広報しないから、次の展示の機会を逃さないようにしなければ。


物販も魅力的なものづくしでした。普段は図録とポストカード以外のグッズは完璧にスルーするのですが、最後までぐらぐら迷ったくらい。結局グッズは我慢したのですが、ポストカード大量購入(笑)。更に、三菱一号館美術館が所蔵するヴァロットンの版画を集めた版画集がこの機会に出版されたので、それも買ってしまいました。結局散財には変わりなし、と。

VALLOTTON―フェリックス・ヴァロットン版画集
VALLOTTON―フェリックス・ヴァロットン版画集


冷たい炎の画家 ヴァロットン展
2014.06.14 - 09.23 三菱一号館美術館

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