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2014/04/30

「ザ・ビューティフル 英国の唯美主義1860-1900」三菱一号館美術館

終了間際ではありますが、三菱一号館美術館の「ザ・ビューティフル 英国の唯美主義1860-1900」展に行ってきました。

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この美術展は2011年から2012年にかけてロンドンのヴィクトリア&アルバート、パリのオルセー、そしてサンフランシスコのリージョン・オブ・オナー、という3館で開催された「Aestheticism - The Cult of Beauty」を元に、V&Aの企画協力で日本向けに再構成したもの、だそう。

既に終わってしまったラファエル前派展(そーいえばアチラも『日本向け再構成』でした…)と重なる部分もあって、どの作品にもみっちり詰まっている美意識を堪能しました。今年はイギリスからの企画展が大変充実していておりますね。

展示の素晴らしさはもちろんですが、図録もよかったです。装幀の素晴らしさもさることながら、厚さの割に軽く紙もめくりやすくて「読む」事をよく考慮されたよき図録でした。こういうの凄くありがたい。永久保存版にします。


構成は以下の通り。
第1章: 芸術のための芸術 Art for Art's Sake
- 序
- 「美術職人集団」
- 新たな美の探求
- 攻撃 - 「詩の肉体派」論争
- 遠い過去、遙かなる場所 I ジャポニズム
- 遠い過去、遙かなる場所 II 古代文化という理想
- ホイッスラーとゴドウィン
- ホイッスラーのエッチング
第2章: 唯美主義の流行 Spread of Aestheticism
- 唯美主義運動とグローヴナー・ギャラリー
- 「美しい人々(上流人士)」と唯美主義の肖像画
- 「ハウス・ビューティフル」
- 「美術産業製品」 - 唯美主義のデザイナーと営利企業
第3章: 世紀末芸術に向かって Towards 'fin de siecle'
- オスカー・ワイルド、唯美主義運動と風刺
- 「美しい書物(ブック・ビューティフル)」
- 唯美主義におけるデカダンス
- 輝かしい落日 - 唯美主義後期の絵画と「ニュー・スカルプチャー」


一番最初に、ウィリアム・ド・モーガンの孔雀の大皿。隣りには向日葵をかたどった鉄柵の一部(トマス・ジェキル)。と、唯美主義を象徴するモチーフがまるで宣言のように並んでいます。孔雀は「美に対する誇り」であり、向日葵は「男性的な美」を示すもの。加えて百合が女性美を象徴するとして、唯美主義の作品にはこれらのモチーフが頻出するのだそうです。


印象に残ったものを並べてみます。

フレデリック・レイトン「パヴォニア」。
こちらを見据える見返り美女。実物を目の前にすると、瞳の印象と共に艶めく黒髪の輝きが目に飛び込んできます。その艶は、彼女の髪を飾るヴェールについた真珠の輝きをやすやすと凌駕。

ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ「愛の杯
国立西洋美術館所蔵の見慣れたこの絵の魅力が、この展示室で見ると倍増しているのに驚きました。周囲を囲む同時代の絵たちとの調和なのか、それとも三菱一号館の展示室ゆえなのか…。実のところロセッティは胃もたれする私なのですが、この美術展で見るロセッティはどれも好もしく感じて、不思議でした。同じ食材でも調味料や合わせる食材でガラっと印象が変わるのと同じかしら(笑)。ロセッティが装幀した本も美しくて離れがたかったです。混雑した美術展ではケースの前に長居する訳にはいかず残念。


エドワード・バーン=ジョーンズ「ヘスペリデスの園
浮き彫りのような立体的な造形。中央の黄金の林檎の木を守る竜はターコイズのような青。バーン=ジョーンズのパトロンの邸宅を飾るために制作されたそうで、ウィリアム・モリスがこの邸宅の為に染め上げた青いリネンの壁掛けと調和していたとか。この絵の周囲も竜の青と呼応する色に染め上げられ、なんとも美しい一角になっておりました。

題材となったヘスペリデスは3人姉妹かと思っていたのですが、ここにいるのは2人の女性。1人は竜に杯を差し出し、もう1人は竪琴で音楽を奏でている。そうしてこの竜を歓待して、黄金の林檎を手にするのだろうか。そしてその先は。。。と考えたくなります。


フレデリック・サンズ「誇り高きメイジー
豊かにうねる髪と、皮膚に与えられた血色とが印象に残ります。

エドワード・ウィリアム・ゴドウィンによる、ホイッスラー邸やマイルズ邸のデザイン画はとても好きでした。実際に制作された家具よりデザイン画の方が好き(笑)。

ホイッスラーのエッチングは凄いと思うけども、この人は油画の方が好き。今回来てたのはテイトの「ノクターン:黒と金 - 輪転花火」。この絵も実際に見ないと難しい絵だと思うから見られて本当によかったけれど、唯美主義で持ってくるなら別の絵がよかったな。。。とも。

ジョージ・フレデリック・ワッツ「愛と死
家の中に入ろうとする死を愛が必死に食い止める。愛の側にあるバラは咲き誇っているけれど、死の側にある植物は枯れ果てている。死の足下に枯れ落ちる枝がかなしい。

アンナ・アルマ=タデマ「タウンゼント・ハウス」応接間、1885年9月10日
ローレンス・アルマ=タデマの娘アンナはアマチュアの画家だったそうだけれど、筆力のある人だったのがこの絵からも分かります。磨き抜かれた床、カーテン、ソファ、壁紙、調度品などの質感と、室内に入る光の感じが見事。

オーブリー・ビアズリーはサロメをはじめあちこちで見るけれど、今回見た中では「アーサー王が吠える獣を見たこと」の線に釘付けに。


そして、この美術展のメインビジュアル、アルバート・ムーア「真夏」。
鮮やかなオレンジにはっとさせられる一方で描かれた様々なものの質感が実際に自分が触れているかのように思えるリアルさ。中央の女性が坐る椅子の足もと、敷かれたラグ、後ろにちらりと見える装飾品、身を包む衣服、そして椅子にかかるマリーゴールド。

そういえば、フォン・グローデン男爵が撮影したシチリア人少年の頭部、の写真がありましたな。いろいろにいろいろな、唯、美しい、、の美術展でした。満足。


三菱一号館のお楽しみはショップの充実度にもあるのですが、今回はポストカードなどのオリジナルグッズが相当少なかったような。ポストカードの種類そのものも少なかったですよねー。せめてもう少し種類があれば、、と残念でした。日本向け企画展で巡回もしないから、仕方無いのでしょうかねぇ。それとも会期末が近づいて、売切のものが多かったのかなぁ。

それ以外の、V&Aのオリジナルグッズはいろいろあって見るのは楽しかったですけども。こちらで紹介されているモンテズマチョコレートのアップルクランブルを買ってしまいました。美味しかったです♪

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