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2014/03/12

「シャヴァンヌ展 水辺のアルカディア ピュヴィス・ド・シャヴァンヌの神話世界」

これも1ヶ月以上前に観て、もう東京での展示が週末で終わってしまったのですが……「シャヴァンヌ展 水辺のアルカディア ピュヴィス・ド・シャヴァンヌの神話世界」についてメモを残そうと思います。

ピュヴィス・ド・シャヴァンヌは私の中ではずっと象徴主義の位置にいた人。ということでこれもとても楽しみにしていました。実のところ会場のBunkamura ザ・ミュージアムは不思議と客筋がいい時にあまり当たらなくて避けがちなのですが(たぶん行く時間帯のせいではあるのです。図録はいつも素晴らしい充実度なのですが〜)、この美術展は東京のあと島根へ巡回して終わり、という事で渋谷をチョイス(笑)。島根県美もいつか訪れたい場所なのは確かながら、今回は東京で。


puvis.jpg


構成は以下の通り。
第1章: 最初の壁画装飾と初期作品 1850年代
第2章: 公共建築の壁画装飾へ アミアン・ピカルディ美術館 1860年代
第3章: アルカディアの創造 リヨン美術館の壁画装飾へ 1870-80年代
第4章: アルカディアの広がり パリ市庁舎の装飾と日本への影響 1890年代


今回の展覧会が、日本で彼を本格的に紹介する初めての機会だったそうです。確かに日本でその絵を目にする機会はそう多くなく、その名も知る人ぞ知る…でしょうか。フランスでは彼を知らない人はいない位の有名人で、その作品もとても身近なのだとか。理由はピュヴィス・ド・シャヴァンヌが壁画を多く手掛けていたからで、その作品がある建物がフランス人にとって身近、って事ですよね。ちょうどナポレオン3世によるパリの都市改造の時期であったことも味方したでしょう。そして壁画を日本へ運んで展示する事はできませんから、日本での知名度はそう高くない、、という事のようです。

では何故今回の美術展が実現したかというと、ピュヴィス・ド・シャヴァンヌが壁画として制作した作品を手元に残す目的で自ら制作した縮小版(と習作など)を、パリを始めとするさまざまなところから集める事ができたから、だそう。日本からも、大原美、島根県美、岐阜県美あたりから出品されています。岐阜県美は何度か見に行っているけれど、ピュヴィの作品は今回初めて見ました。やっと会えた感。


縮小版とはいえ例えば本展のメインヴィジュアルになっている「諸芸術とミューズたちの聖なる森」は縦93cm x 横231cmの大きなもの。実際の壁画はコの字型の壁に描かれているものが全て平面で見る事ができるのですから、その静かなる迫力の前には息をするのも忘れそうになります。女神たちが集う悠久の森。

上の方でこの美術館の客筋について書きましたが、今回は全くそんな事もなく、静かに集中して鑑賞できました。ここでこんなに快適に見られたのは記憶にないくらい。特にこの絵の前は、それぞれが他の人の鑑賞を邪魔しないように思い思いに絵を楽しんでいて、素敵な空間でした。

今回の展示でけっこう驚いたのは、壁画を手掛けている人だしあの色調だからとフレスコ画の人だと信じ切っていたのに、違ったこと。でもフレスコ画らしく描く事が彼の技術の高さでもあり特徴でもあって、その画風で描く神話世界であったり理想郷=アルカディアは私にはとても心地よく、心ゆくまで堪能することができたのでした。

オルセーの「海辺の乙女たち」が見られたのは嬉しい限りでした。他のも見たかったけどね……。西洋美術館の「貧しき漁夫」は、ポーラ美と共催の「モネ展」に出品されていましたのでここでは見られませんでしたが、島根県美では展示されるそうです。大原美のは、これだけ集まったシャヴァンヌの中でも極上品の1つだと思います。

存命中からピュヴィが大家(たいか)であったのが妙に納得できたのが、オーギュスト・ロダンによる立派な胸像(西洋美術館所蔵)があったこと。そして、日本の西洋画壇にも大きな影響を与えた例として、黒田清輝や藤島武二などが例示してあったのも興味深い事でした。


会場内で、「壁画に描いた理想郷 シャヴァンヌの世界」という35分ほどの映像を見る事ができます。島根県美が制作したもので、フランス国内にある実際の壁画の様子であるとか、どのような人生を送ったか、という事がまとめられていて大変に見応えがありました。35分というのは美術展で流れる映像としては相当に長編ですが、見てよかったです。ピュヴィがこれらの神話題材に込めた意味を知った後では、彼を象徴主義の中にひとくくりにすることは違う、、と思うように。いろいろな絵画のタイプがあるけれど、そのどれにも影響を与えたり受けたり、そしてどこにも分類しがたい稀有な存在なのだと理解しました。

彼の訃報に接したシニャックは「これからいったい誰が壁を飾るのか」と言ったとか。


Bunkamuraでの展示は終了してしまったので、島根県美の開催要項をご案内しておきますね。

水辺のアルカディア ピュヴィス・ド・シャヴァンヌの神話世界
2014/03/20-06/16 島根県立美術館
10:00-日没後30分(展示室への入場は日没時刻まで)
火曜日休館 (ただし4月29日、5月6日は開館、5月7日[水]は閉館)

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