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2013/07/13

「ロマンの系譜 怪奇幻想玉手箱 ゴヤからシュルレアリスムへ」富山県立近代美術館

4月末から6/30まで富山県立近代美術館で開催されていた「ロマンの系譜 怪奇幻想玉手箱 ゴヤからシュルレアリスムへ」を見てきました。

ゴヤの四大連作版画が全て見られる事に加えて、どう考えても私好みだろうという展示。他に巡回のない富山近美の独自企画だったので、なんとか見に行けないかと計画を立てては断念し…を繰り返していました。東京で開催してたのも見られなかったのいっぱいあった位なので、行けないなーとほぼ諦めていたのです。が、NHK「日曜美術館」アートシーンで本展が紹介されたのを見たらまた火がついてしまい、結局がんばって行ってしまいました。もう、ホントに美術館だけ行って帰ってきた感じなんですけど、それでも行って良かったです。ああやっぱり自分の勘は信じてあげないとダメだわ。

構成は以下の通り。

1. 革命と激動の時代を生きた画家 ゴヤ
2. ロマン主義とその申し子たち
3. デカダンの夢 19世紀末美術と象徴主義
4. 痙攣的な美を求めて 20世紀、そしてシュルレアリスム


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ゴヤの顔出し看板w(お子様用)。美術館と顔出し看板、割とよく見る組み合わせかも。


第1章のゴヤの版画4連作はいくら見ても終わりが来ないのでは、という位のボリューム。しかも最初の「気まぐれ(ロス・カプリチョス)」80点組(!)からツボに入りまくり、何度も見直しに行ったり。何点かは今までどこかで見ていると思うのだけど、その風刺の効きっぷりにニヤニヤしつつ。けっこうグロテスクな描かれ方なのに、そこにいる人々や動物、得体の知れない生き物たちはどこか愛嬌があるのですよね。

そして、これだけまとめて見る機会は私にはあまりなかった為か、ゴヤの明暗表現(特に光の当たる部分)に気持ちが持って行かれました。今までは版画というと細かい筆致や描写など、どちらかというと「黒いところ」wに目が行っていたのにね。薄暗い室内や夜の屋外で、ランプやたいまつや月明かりなどで浮かび上がったのであろう部分。カッと照らされていたり、ぼんやり浮かび上がったり、その強弱が巧みだなと。

「戦争の惨禍」も80点組。こちらは非常時の狂気・蛮行が並び…ゴヤは描かれた内容=残忍な行為そのものに目が行くように仕向けています。よくもこれだけエネルギーのある作品を何十点と描き続けたものですよね。それだけ戦争という名の下に行われた行為への気持ちが強かったという事なのでしょうが…。

「闘牛技」も何点か見た事があったけれど、まとめて見るとゴヤの闘牛への愛と臨場感に圧倒される。版画だという事を忘れてしまいそう。「妄」はとらえどころのない作品群。「気まぐれ」に通じるところもあるけれど…。第1章で痛感したのはスペイン史と版画技法の知識の欠如。まぁ、油画だって水彩だって彫刻だって何も知らないんですけど(笑)、版画技法は立体的というか具体的に見て知りたいかな、と。スペイン史もがんばりましょうとも。ははは。


第2章あたりから、ぐっと身近に。他の美術展などで惹かれた人たちが並んでおりました。ブレイク、ドレ、ドラクロワ、ブレスダン…。ジョン・マーティンという人は知らなかった、気がする。J.ミルトン「失楽園」の挿画(メゾチント)がドラマティック。ヴィクトル・ユゴーに絵の才能もあったというのは知らなかったです。って横浜美術館から来てたエッチング、もしかして見た事あったりして…。

そしてグランヴィル。花や動物を擬人化した絵の人という印象を持っていたけど(鹿島コレクションの美術展は見逃しているので…)、けっこうな幻想画を描く人でもあったのですね。あら、もっと見たいわ…。


予想外だったのが第3章。私、ここで象徴派が見られると思っていなかったので、相当テンションあがりましたです。去年(だっけ?)の象徴派展と重なる作品もかなり多かったのですが、日本国内で象徴派の絵を集めるとなるとこのラインナップになるのでしょうね。好きな世界ですから、再会を喜びつつ堪能しました。ルドンは岐阜県美から「幽霊屋敷」挿画。これは初めて見たと思う。岐阜県美からはモロー「ピエタ」「聖セバスティアヌスと天使」も来てました!いやっほう、独り占め。飾られている場所が違うせいか照明のせいなのか、後光がキラキラと輝いて、印象が違って見えました。

象徴派展に出ていた姫路市美のクノップフ、レオン・フレデリック、デルヴィル、ロップスなどとも再会。更にはマックス・クリンガー「手袋」(町田版画美)もいましたよー。クリンガーはその後何回か見て画集も買ったのですが、何度見ても好き。そして他の版画を山ほど見たあとでは、この作品ってかなり洗練されているよな、と。絵のスタイルもそうだし、描かないものから想像させる巧みさも。

(しかしこう行く先々で町田市立国際版画美術館所蔵品をたくさん見ているというのに、まだ足を運んだ事がないという…1度行かねばなりませぬなぁ。)


第4章は20世紀とシュルレアリスム。ほとんどが自館の作品だったので、ここがメインでしょうか。ピカソ、シャガール、クレー、エルンスト、マグリット、ダリ…。あ、デルヴォーさんの大きな油彩もありました。ミロ、マン・レイ、デュシャンと表現方法も拡がっていく面白さ。シュルレアリスムって普段だと「ふーん、不思議。ふふ」って感じで軽く見るだけなのですが、私の好きな世界から繋がっているのだと思うと、見え方も変わってくるみたい。少し自分の世界が拡がった気がしました。そして富山近美のコレクション凄いぞ、と。

出展リストがないのはとても残念でしたが(図録は買う気満々だったとは言え、会場内で確認したい事もありますものね…)非常によかったです。あ、でも展示作品全ての図版が図録に収録されていないのにはがっかりでした…。版画も全部入れてくれなくちゃだわー。


常設も充実していました。特に2階の常設I「20世紀美術の流れ」では無料で音声ガイドも貸していただけます。まぁ、私は時間が足りなくなってしまって最初の方しかガイドは聞けなかったのですが…20世紀以降のものがまとまっているのですから、普段スルーしがちな近年の作品なんかも面白く対峙する事ができました。

こちらも出展リストは用意されていなかったのですが、ホームページに常設Iの展示リストだけはPDFがありました。あと、音声ガイドと一緒に手渡されるリーフレットに主な作品のカラー図版があるのはよいですね。

常設Iの最初のコーナーにマティスが女性を描いた版画「白狐の毛皮」があって、それがとても印象に残っています。マティスというと思い浮かぶようなJAZZ的なものでも、デフォルメされたフォルムでもない。むしろ写実的とも言えるくらい。うーん、あれは何年頃の作品なのかしら。メモしてこなかったので分からないのだけど。その女性が、これひょっとしてココ・シャネルなんじゃないかなー?とずっと思っているのですけれど。どこにもそんな事は書いていないし、館の方にも確認しなかったから事実の程はわからないけど、顔立ちとか服装とか、見れば見るほどシャネルっぽい。バレエ・リュスの舞台の仕事などで関わりもあったでしょうしねぇ。ああ、せめて絵ハガキを買ってくればよかったわ。

美術館自体がとても気に入ったので、再訪の折りには係の方に確認してみようと思います。そして絵ハガキも買う(売り場に並んでいたのを見たのに買わなかった私のバカ)。


なお富山市では、富山駅前から近代美術館や市内のアートスポットを巡る無料のミュージアムバスというのが1時間に1本走らせていまして、私もこれを利用しました。近美からのバスがその日の最終便だったので他にまわる事もなく駅まで戻りましたが、たっぷり時間をとって他の美術館とセットでまわると楽しいと思います。私も次はそうしたい。

今は富山ってとっても行きにくい場所の印象があるのですけど(どこから行っても同じくらい遠いというか…)、北陸新幹線が開通したら1時間ちょっと短縮されるので東京からは行きやすくなりますね。今も飛行機の時間が上手く合えば早いのですが(市内から空港までも近いし)冬場は欠航の恐怖が(晒された人w)。また金沢とセットで遊びに行きたいでーす。

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