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2013/06/02

静岡市美術館「レオナール・フジタとパリ 1913-1931」

ようやく美術館巡りに行ける位のコンディションに戻ってきたので、駆け足でいろいろ巡っています。

今回は名古屋方面へ遠征してきました。もちろん見たいものがあるから行くわけですが、同時にリフレッシュでもあり、(ちょっと時間が経ってしまったけど)母の入院ケアに対する自分へのご褒美も兼ねておりました。自分の事だけで全てが完結するシンプルさに羽根を伸ばしつつ、家族がいる日常にも感謝できる。なので、まだしばらく定期的に続けたいなーとも思っているのです。


まずは静岡市美術館で開催中の「レオナール・フジタとパリ 1913-1931」展へ。近年フジタの美術展はいろいろな切り口で開催されていて、私も少ない経験なりにいくつか鑑賞してきました。そして今も静美の他に東京富士美術館(6/30まで、挿絵本)、日比谷図書文化館(6/3まで、日本での本の仕事)と開催中。他にブリヂストン美術館の「Paris、パリ、巴里─日本人が描く 1900–1945」にも5点くらい展示されていて、正にフジタ特集の様相。

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「レオナール・フジタとパリ 1913-1931」展、構成は以下の通りでした。
第1章: 渡仏以前--画家への道
第2章: 模索の時代--パリの潮流の中で
第3章: 成功への階段--パリ美術界へのデビュー
第4章: 栄光の時代--エコール・ド・パリの寵児
第5章: 新たなる旅断ち--マドレーヌとともに
フジタが交友した芸術家たち


こちらの展示はタイトルにある通り、フジタのパリでの創作活動を紹介するもの。そのキャリアのごく初期に描かれたものや芸大卒業制作の自画像から始まり、画風のが変化していく様子がはっきり見てとれる興味深いものでした。すごく面白い美術展で、これどうして東京(どころか関東でも)で開催されないのかしら。巡回予定を最後に記載しておきますので、お近くで開催されるようでしたらぜひに。


まず最初に感じ入ったのは、最初の奥様への細やかな愛情でした。あとから奥様を呼び寄せるつもりで1人で渡仏したそうですが、第一次大戦が始まって交流が途絶えてしまった為にやむなく離縁という事になったのだとか。その奥様のご実家にはフジタからの手紙が保存されていて、そのごく一部が今回展示されていました。夫婦だからこその軽口や愛情、新天地での芸術家としての決意などなど…人柄が伝わり、ぐっと身近でリアルな人物として感じられるようになりました。(まぁ、本人はもしかしたら「ええっ、あの手紙公開されてるのかよorz」とか思っているかもしれませんが…有名人って大変よね)

渡仏に際してフジタはこれから自分が描く絵は西洋画でも日本画でもない、、というような覚悟をしたためているのですが、その自分のスタイルを模索していく中の絵にもフジタらしさが既に表れていました。コクトーを描いた肖像画など、キュビズム的なのにとってもフジタ。

ピカソのアトリエで目にしたルソーの絵「詩人に霊感を与えるミューズ」に衝撃を受けたというフジタ(この絵は別の意味で私にも衝撃を与えるのですが、それはまた別途w)は、またルソー的とも言える風景画も残しています。これらを見るとルソーの個性というのもまた無二のものだと思わずにいられません。


また、おでこが広くておちょぼ口、という独特な人物描写も初期の頃は更に強調されていました。交流のあったモディリアーニのようでもありますし、横顔などはギリシャの壺絵を想起させます。そしてたぶん意識的にフランス人が好むジャポニズム的な要素も入れ込んでいたのでしょうね。署名も、アルファベットと漢字両方いれるようになったのは多分渡仏後だし、あの特徴的な風貌や猫と一緒の自画像なども含めて、フランスで生き残る為の自己プロデュース力が感じられました。

ジャポニズムの要素がパリで好評だった事を受けてでしょうか、その後のフジタは日本美術を積極的に取り込んでいったようです。金箔を使った時期に絵が私は大好きなのですが、それらも何点も見られました。渡仏からの絵の変化を見ていくことで、金箔を使った時期というのがどの時期に当たるのかが流れとして理解できたのも収穫。

キリスト教を主題にした絵を描くようになったのは、2番目の妻フェルナンド・バレーが敬虔なカトリック教徒だった影響だとか。そしていよいよ乳白色の時代へ。この頃フジタはバレーと別れてユキ(リュシー・バドゥー)と出会っているそうです。フジタの転機は女の変わり目?とか思いましたですよ(笑・いやホントに)。

乳白色の時代は裸婦像が多く見応えありましたが、加えて依頼で描いた肖像画も何点か。「ロジータ・ド・ガネイ伯爵夫人の肖像」は、気品と教養を感じさせる夫人の姿と壁に掛けられた中国の騎馬像との対比にはっとさせられました。構図こそ伝統的だけれど、モダンでひんやりとした質感が心地よい。これは肖像画の依頼が殺到したのも納得だなと。東京国立近代美術館の「五人の裸婦」も出ていました。


しかし!私最大のヒットは、フジタがユキの為に描いたプライベートな連作「…風に」。ルノワール、ゴーギャン、ピサロ、マティス、シニャック、ローランサン、パスキンなどなど名だたる画家たちの作風で描かれた26枚の作品群。これがもう、見事なものなの!フジタのユーモアと観察眼、画家たちへの敬愛や仲間意識も感じられて、見ていて飽きません。ていうか私、肩震わせて笑いをこらえつつ何周も見ちゃいました。

ルノワール風の裸婦像なんて、筆運びはルノワールとも思えないのだけど、裸婦のプロポーションや色合いはルノワールそのもの。ザツキン風の一筆書きみたいな裸の男像とか、パスキン風のぽやんとした人物画とか、もう!と。しかし最高だったのはシニャック風の風景画。シニャックといえばもちろん点描の人なんですけど、フジタの「シニャック風」はさささっとすかすかのw点線で描いただけのもので「略しすぎ!」と絵に突っ込み。それなのにちゃんとシニャック。た、たまらん。


ユキとの関係が冷え切った中で出会ったマドレーヌ・ルクーは、フジタの中南米から日本への旅に同行し、日本で不慮の死を遂げてしまったそう。彼女は「魅せられたる河」の「オペラ座の夢」に描かれている眠る女性なのですね(この挿画は昨年のフジタの挿画展で見ました)。

展示は最後に、フジタと交流のあった画家たちの絵を紹介して終わります。ルソーが3枚ありました。中でも「待ち伏せる虎」の鮮やかな緑に惚れ惚れ。ルソーの絵はけっこう見てきたと思うのですが、この鮮やかさは凄い。個人蔵だそうで、見られてよかったです。(全体に個人蔵の作品がけっこう多くて新鮮に楽しめる展示でありました)

他にアンドレ・ワルノーが描いた(ルノワールの)「ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会」イラストも目をひきましたし、モディのモデルで奥さんのジャンヌが描いた絵というのも初めて見たかも。そういえば、キキが描いた絵もあったわ!

ああしかし、先にフジタの連作「…風に」を見てしまったせいで、その人たちの絵を見るとつい笑いが出てしまうのが困ってしまいました。この美術展だけでなく、その後訪れた美術展でも同様で。私きっともうこれからずっとシニャック見る度あのフジタの絵を思い出して笑ってしまうんだわ…w


初めて訪問した静岡市美術館は素敵なところでした。駅から近いし(地下道通って行ける)、天井も高くて広々とスペースをとってあるのでゆったり見られました。あそこなら何度でも行きたいなぁ。

藤田嗣治 渡仏100周年記念 レオナール・フジタとパリ 1913-1931
2013/04/20(土)-2013/06/23(日) 静岡市美術館
2013/07/02(火)-2013/08/25(日) 熊本県立美術館
2013/08/31(土)-2013/10/20(日) 北九州市立美術館
2013/10/25(金)-2013/12/01(日) 美術館「えき」KYOTO
2013/12/07(土)-2014/02/02(日) 新秋田県立美術館
2014/02/21(金)-2014/04/06(日) 岡山県立美術館

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