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2012/10/25

「アントワープ王立美術館所蔵 ジェームス・アンソール - 写実と幻想の系譜 -」

デルヴォー展に続いて、損保ジャパン東郷青児美術館「アントワープ王立美術館所蔵 ジェームス・アンソール - 写実と幻想の系譜 -」を見てきました。

近日中に行くつもりでサイトを見たら、「※展示替の為、10/23〜「ワーテルローの胸甲騎兵」は展示されません。何卒、ご了承ください。」って書いてあったので、慌てて週末の予定に追加。

新宿で買い物して荷物が増える予定だったので先に府中に行ったのですが、同じベルギーの画家で交流もあった2人、年代順にアンソール→デルヴォーでもよかったかな、と後で少し思ったり。

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構成は以下の通り。

第1章 写実とアカデミズム
 1.アンソールの美術アカデミーにおける古典的描写方法の習得
 2.外光主義(プレネリスム)
 3.アンソールとブリュッセルの仲間たちによる写実的な静物画と肖像画
 4.画家は近代の真の英雄である
 5.近代生活のイメージ
 6.貧しき人々の尊厳
第2章 グロテスク絵画に向けて
 1.光の感受性
 2.線の感受性
 3.ジャポニズム
 4.創造手段としてのあやかし
 5.アンソール芸術における“死の舞踏”とその他の骸骨
 6.仮装
 7.カリカチュア、悪魔、仮面
 8.プリミティヴィスム:いわゆる15世紀初期フランドル美術の再発見
 9.風刺


現在改修中のアントワープ王立美術館から、ごっそり106点、プラス豊田市美術館所属「愛の園」の107点が見られます。この感想を書くために調べ物をしていたら、この4月から6月まで豊田市美術館で開催されていた際にはメナード美術館所蔵「仮面の中の自画像」が出品されていたと知ってしまった…。あー、それ見たかったよ…

アンソール単体かと思っていたけれどそうではなく、アンソールと彼に影響を与えた画家たちの作品を展示。それゆえにアンソールの絵がどんな影響を受けて変化していったかが非常に判りやすい よい展示になっていました。感心。

こちらの美術館は青少年向けの美術鑑賞教育にも力を入れているそう。確かにBSで美術番組を見ていると、こちらの美術館所蔵のゴッホ「ひまわり」に目を輝かせる子供たち、というCMが流れていたりします。このアンソール展でも青少年にも判りやすい様にと作られた説明展示が私にもとても有効で(笑)ありがたかったです。アンソールの絵の経緯を追いながら、西洋美術史のお勉強まで出来てしまうのですから。更には、ジュニア版ブックレットなるものも用意されていて(300円)私は図録でなくコレを買ってしまいました。だって判りやすいんだもん。


さてアンソール。私が彼の絵に興味を持ったのは岐阜で見た「象徴派展」に出展されていたエッチングと油画数点を見てからです。東京でも彼の美術展があるのは把握していたので、それは何としても見にいかねば!と思ったのでした。でも、実際には私が興味を持った(そしてアンソールの代名詞とも言える)仮面や骸骨モチーフの絵の展示はそう多くなくて。そういった絵の洪水に翻弄される事を期待していたので若干の肩すかしを感じなくもなかったけれど、結果的には充分に面白く興味深い展示でした。こんなに画風が変わっていくものなんですなぁ。


アンソールの時代は絵画の価値観が動き始める直前という感じでしょうか。アカデミズムに反発し、写実主義やプレネリスム(外光主義)に大いに影響を受けて風景画や静物画を描いていくアンソール。肖像画のセクションが興味深かったのは、昨今の私の興味がそこにあるから、かしら。自身の祖母を描いた「青いショールの老婦人(画家の祖母)」は少々レンブラント的かも。暗い室内に日差しを受けて浮かび上がる老女の姿。印象派の影響を受けたと思われる絵もありましたが、アンソールの絵はフランスのそれよりはぐっと暗いトーン。祖母の肖像画同様 暗い室内に入る日差しがぼんやり浮かび上がらせるものを描いた「オスランドの午後」は印象深し。

また、アンソールは自画像をよく描いてもいたそうで、ここには30歳頃に自らを写実的に描いたものと、厳密には自画像とは言えないかもですが(笑)36歳頃に自らを骸骨にカリカチュアして描いた「絵を描く骸骨」が。本当に同じ人が描いた絵ですかって信じられない程に画風が違います。

第1部で展示されていたアンソール以外の絵では、ルーベンス「ミネルヴァ」やクールベ「オルナンの岩」などのビッグネームもあったけれど、レオン・フレデリック「ふたりのワロン地方の農家の子ども」が好きでした。労働で荒れたと思われる手をして汚れたブルーのスモッグを着た表情の硬い子供達の絵なのだけど、それでもなお透き通る青い瞳の美しさが印象に残ります。


第2章は、アンソールが写実的な絵から骸骨や仮面の絵を描くようになった事の分析的な展示。光の表現をレンブラントから、線の表現をルーベンスやドラクロワから、影響も受けているとか。ルーベンスの銅版画が4点並んでいましたが、どれも見事なものでした。そして、コメディア・デラルテや両親が営んでいた土産物屋にあったカーニバルの仮面や日本や中国などの異国趣味のもの、そしてブリューゲルなど初期フランドル絵画からの再発見、14,15世紀に描かれた「死の舞踏」…などの影響が、お馴染みの仮面や骸骨のモチーフとなって登場、ということのよう。

今回の美術展のメインビジュアルとして使われている「陰謀」は大きなサイズでインパクトも大。色遣いは明るいけれど、タイトルを知らずともなにやら不吉さを感じさせますよね。この絵、結婚式の風景なのだそうですよ。なにやら企みがありそうな新婦にがっしりと腕を捕まれた新郎。その新郎に死んだ赤ん坊にも見える人形を抱いて何か訴える女性。周囲には何かを企んでいそうな仮面の人が取り囲んでいる。骸骨は右上に。見入ってしまいますね。

デート中の社会人カップルが、この絵の前にしつらえられたベンチに手を繋いで腰掛けて鑑賞していたのですが、何だか見ようによってはとてもシュールな光景だったような(笑)。


他の絵とは全く印象の異なるアンソール「悲しみの人」も印象的。額に茨の冠があることからキリストを描いたのだと判りますが、部分部分を見ると赤鬼を模したのかと思う程に険しい表情をしています。なのに全体で見るとタイトル通り悲しみが覆っているのです…。また、これを見るために駆けつけたとも言えるアンソール「ワーテルローの機甲部隊」は台紙の上に3枚並べられた紙全体に兵士の戦いの場面が黒・青・赤のチョークでみっしり描き込まれたものでした。ああ、これは展示期間が短くても仕方無いかも。こういうみっしり描き込んだのが見たかったのです。

アンソール、作曲まで手がけたそうで譜面も展示してありました。オーディオガイドを借りればその音楽を聴くことができたそうですが、今回は借りなかったので未聴。いったいどんな音楽だったのでしょうね。(そして象徴派展にメナード美「オルガンに向かうアンソール」があったのを思い出す…あのオルガンで作曲したのかしら)

2章のアンソール以外では、上で書いたルーベンスの銅版画の他にピーテル・ブリューゲル(子)の「フランドルの諺」から5点と「七つの善行」は矢張りインパクトありました。こういう風刺ものはブリューゲル一家がやっぱりスゴイと思うのです。


アントワープ王立美術館所蔵 ジェームス・アンソール - 写実と幻想の系譜 -
09/09-11/11損保ジャパン東郷青児美術館

愛知と愛媛では既に終了していますが、東京の後に以下の巡回が予定されているそうです。
2012/11/23 - 2013/01/14 岩手県立美術館
2013/02/08 - 2013/03/17 岡山県立美術館


常設には、この美術館の顔であるゴッホ「ひまわり」、セザンヌ「りんごとナプキン」、ゴーギャン「アリスカンの並木道、アルル」がガラスの向こう側に。購入時あれだけ話題になった「ひまわり」、ずっと昔に何年も新宿に通勤していたのですが、実は初めてのご対面でした。警備上致し方ないとはいえ、ガラスの向こう1メートルくらい先に飾られたものを見るというのは、ちと淋しい。それでもゴッホの絵の具がこんもり盛られているのは確認できますけれど…ね。

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コメント

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またまたご無沙汰

釣られました。
食べ物以外で、意外でしょ?
好きなんです。
大好きなんです。
アンソール。
岡山、行こうかなぁ。

アンソール!

わー、ぱくちーさんご無沙汰しています。
お好きなんですね。
大好きなんですか。
アンソール。

学校時代からの絵の変化が凄く面白かったです。てか、こんなに普通変化するか?ってくらい変わるんですね。びっくりしました。
アンソールだけじゃなく他の人の作品もけっこうあるので、アンソールの割合はそんなに高くないのですが(うーん感覚的には半分くらいじゃなかったかしら)、お好きならばよいチャンスかと。岡山…ちょっと遠出になりますかね…。

私も名古屋で見るのが一番楽しかったかも、と残念に思っています。岡山にまたメナード美「仮面の中の自画像」が出るとよいですね。私もみたいです、この絵。