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2012/10/21

「大エルミタージュ美術館展 世紀の顔・西欧絵画の400年」

遠征最終日。まずは朝イチで前日開幕したばかりの京都市美術館「大エルミタージュ美術館展 世紀の顔・西欧絵画の400年」展へ。ええ、これも東京で見られなかったんですってば。到着したのは開場10分前くらいだったかな。ほんのり霧雨が降るお天気でしたが、開幕2日目とあって熱心なお客さんが3-40人並んではりました。最終的には後ろにも同じ位並んでいたかも。少しは早めに開場するのかなーとうっすら期待していたけどオンタイムでした。

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京都市美術館の建物もステキでしたねー。何か別の建物を流用した美術館なのかと思ったら昭和8年竣工で日本で2番目の大規模公立美術館として設立されたものなのですか。(前田健二郎設計図案)。現在東京で開催中のリヒテンシュタイン展もここで展示するそうですが、建物の格とあったよい美術展になるのでは…(バロックルームの再現は東京だけみたいですけれど)。

開場直後でしたので(みなさん最初から順番にじっくりご覧になりますから)、人混みを避けつつ、とても快適に見られました。

構成は以下の通り。

第1章 16世紀 ルネサンス:人間の世紀
第2章 17世紀 バロック:黄金の世紀
第3章 18世紀 ロココと新古典派:革命の世紀
第4章 19世紀 ロマン派からポスト印象派まで:進化する世紀
第5章 20世紀 マティスとその周辺:アヴァンギャルドの世紀


16世紀はイタリアン・ルネサンスの絵画が集結。宗教画や神話を題材にした絵が並びます。パリス・ボルドーネ「ウェヌス、マルスとクピド」はクピド(キューピッド)の為に武器を置き、木からオレンジの実を取ってあげているマルス(軍神)の優しくかいがいしい表情に、こちらまでにっこり。バルトロメオ・スケドーニ「風景の中のクピド」、愛らしくいたずらっぽい表情でこちらを見つめるクピドともようやくご対面。

17世紀のバロックはオランダ/フランドル絵画がメイン。この辺りから個人的にはぐぐっと興味が増します。オランダ/フランドル絵画好きなので、もっとたくさん見たかったくらい。ルーベンス2枚、ヴァン・ダイク2枚、レンブラント1枚がメインでしょうか。

罪を犯して餓死の刑に処されている父の元を訪れた娘が、自分の乳を与えようとしている場面を描いたルーベンス「ローマの慈愛(キモンとペロ)」、ナルシスティックなヴァン・ダイクの自画像の後に見たヴァン・ダイク「エリザベスとフィラデルフィア・ウォートン姉妹の肖像」の可憐な少女たちといったら。レンブラント「老婦人の肖像」で暗闇に浮かび上がる老女の顔と襟元を見ると、手前で彼女を照らしているであろうろうそくのちらちらした灯りが見えるよう。


18世紀はフランスとイギリスの絵画。寓意画、風俗画、肖像画、風景画と題材が増えてくるのを意識させられます。ブーシェのクピド「絵画の寓意」と「詩の寓意」、寓意(アレゴリー)もの大好き。このクピドの顔立ちはちょっと小憎らしいような愛想のなさなんだけど(笑)。1700年代にパリ・オペラ座のバレリーナであったカマルゴ嬢を描いたニコラ・ランクレ「踊るカマルゴ嬢」、先にシャルダン展を見ていなかった素通りしてしまったかもしれないジャン=バティスト・シメオン・シャルダン「洗濯する女」。哲学者ヴォルテールを描いたジャン・ユベールの2作品は、ヴォルテールの人柄がにじみ出てくるよう。

ここのところ何作か目にして名前を覚えた(笑)ヴィジェ=ルブランはステキな自画像がここに。他にもエカテリーナ2世を始め美しいご婦人方の肖像画が並んでいた上に、ジョシュア・レノルズ「ウェヌスの帯を解くクピド」。ウェヌス(ヴィーナス)はクピド(キューピッド)の母なのに、母の着衣(といっても既に上半身はほとんどあらわなんですけどね)を脱がす手伝いをしているという。母は顔を半分かくして恥じらうそぶりはしているものの、それは誘惑とほとんど同意語、みたいな。女性の私にとっても眼福なエリアではありました。


19世紀の絵画も中心はフランスですね。ここに私にとって至福の1枚がありました。アンリ・ファンタン=ラトゥール「水の妖精ナイアス」。海の中を渡っていく白い後ろ姿と波打つ豊かな髪、そして複雑な色合いを見せる水面とに魅せられます。図録の解説によると、どうやらこの絵はホフマンの歌劇「ウンディーネ」かプーニのバレエ(どちらも知らないな…)にインスピレーションを受けて制作されたのではないか、と。どこか音楽的な印象を、私のアンテナが受け止めたのかもしれませんね。その横に飾られていたジュール・ルフェーヴル「洞窟のマグダラのマリア」もなまめかしい裸身が描かれてはいましたがやはり音楽的で、魅惑的な一角となっていました。

つい笑ってしまったのはフランソワ・フラマン「1802年マルメゾン宮殿でのパーティ」。マルメゾン宮殿、つまりはナポレオンの妻ジョセフィーヌが購入したお城の庭で、軍服の男性と白いドレスに身を包んだ女性たちがお茶の接待を受けている絵なのですが、その画面の右側にはナポレオン1世とおぼしき男性が女性を追い掛けているのですもの。とうぜんそこには妻ジョセフィーヌもいる訳で、ええっ、大丈夫?とも思う訳ですが、後で図録を見たら、ここに描かれた人物たちは全てどれが誰かが判っているそうで、追い掛けていた女性はナポレオンの継子なんですって。明らかになると、またちょっと絵から受ける印象が違ってきますね(笑)。


そして最後の20世紀のお部屋。正面にばばーんとマティス「赤い部屋」が鎮座していますが、ぐっとこらえて手前から。まずは大好きアンリ・ルソー「ポルト・ド・ヴァンヴから見た市壁」。ひろしま美術館で見た「要塞の眺め」と似た印象を受ける絵です。デュフィ「ドーヴィル港のヨット」の全体に曇った天候を思わせるトーンにもかかわらず、受ける印象の軽快さが愛しくもあり。

そして最後にこの美術展の目玉であるマティス2枚。「少女とチューリップ」と「赤い部屋」。「赤い部屋の壁の部分は、最初は青だったんですってね。塗り替えた名残が絵の縁に残っていて、それも見る事ができました。青の文様が織物的で、それもあってか余計に絵全体が平面に閉じ込められた印象。マティスはもっとたくさん生で見たいなぁ。


最後の最後まで見るかどうか迷っていた美術展でしたが、行ってよかった(ま、でも次からは遠征じゃなく東京でつかまえないとね)。図録がとても充実していたのもよかったです。さすが千足伸行先生監修。


「大エルミタージュ美術館展 世紀の顔・西欧絵画の400年」
10/10-12/06 京都市美術館

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